ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全曲演奏会 vol.1@サントリーホール(ブルーローズ)

おかげさまで11月7日、サントリーホールブルーローズにおきましてベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全曲演奏会vol.1を終えることができました。
ご来場くださいました皆様、お世話になりました皆様、応援くださいました皆様に心から御礼申し上げます。

今回は、ベートーヴェンの初期ソナタ第1番、第4番、第5番、第8番を取り上げました。
愛、怒り、苛立ち、嘆き、情熱、祈り、憧憬、、、人間が持つあらゆる感情をダイレクトに音世界に体現したベートーヴェンのピアノ・ソナタは、まぎれもなく人間探求の旅であり、奏者にとり自分の内面をさらけ出す行為でもあります。

初期のピアノ・ソナタを作曲していた時期にベートーヴェンが使用していた楽器は、ヴァルターのフォルテピアノ。モーツァルトが弾いていたのと同様、5オクターヴの音域しかないウィーン式の軽やかな楽器です。

今回のリサイタルで弾いたベーゼンドルファー280VCピラミッドマホガニーとヴァルターモデルのフォルテピアノをffで弾いて、音量を比べてみましたら、前者が100デシベル、後者が90デシベルでした。

軽やかな楽器で作ったのだから軽く弾く。。。というスタンスもあり得たのかもしれませんが、今回、あえて私はウィーンに出てきた野心的青年ベートーヴェンのエネルギーと揺れ幅の大きさを現代のウィーンの名器ベーゼンドルファーに託しました。

取り上げた4曲の中で、第4番は巨匠アンドラーシュ・シフ氏が32曲の中で一番難しいとインタビューで述べておられるソナタです。
凡人の私にはもっともっと難しかったです。変ホ長調のこの曲には、「戦うヒーロー」ではなく「平和を願う英雄」の姿が音符の向こうから見えてくる気がしました。

世界平和からほど遠い、心が痛むニュースが毎日入ってきています。
アンコールには、シューベルト:「悲しみのワルツ」を選びました。

昨日竜王戦に勝利し八冠を防衛した藤井聡太竜王が、会見で色紙にしたためた言葉が「盤上没我」。天才棋士の素晴らしい言葉に感動です。

ピアノ弾きとして「鍵盤上没我」を目指して次のステップへ!と勇気をいただきました。来年のvol.2は9月7日。
ヴァルター・モデルのフォルテピアノを運び入れて《月光》などの幻想ソナタに臨みます。神秘とファンタジーの世界への挑戦です。

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