名器エラールで聴くピアノ名曲選

東京上野の 国立科学博物館 で行われましたミュージアム・コンサートに出演させていただきました。
東京・春・音楽祭 のコンサート・シリーズです。快晴の春の一日、アールデコ調の美しい歴史的建物の中で、1845年製のエラールを演奏。
歴史的楽器を置くのにぴったりの雰囲気の場所でした。

昨夜5時に、エラールの搬入、演奏会のあと搬出。
エレベーターにエラールが入らず、2階の会場まで階段で運搬していただきました。
本当にご面倒をおかけいたしました。
平日の2時からという時間帯にも拘わりませず満員のお客様がいらしてくださり、「完売で入れなかった」というメールを何人かの方からいただきました。申し訳ございませんでした。

1845製のロンドン製のエラール。
私が普段弾いているパリ製のエラール(1868年製)の方は、細い感じの音ですが、このロンドン製は、しっかりした芯のある感じの音でハードな印象です。
ドイツもの(今日は前半ベートーヴェンを弾かせていただきましたが)の堅牢な構成にもあっているように思います。

後半はショパンとリスト。
明るい陽射しが差し込む中での夜想曲というのもなんですが、しっとりした空気が会場に流れ、楽器の力を感じました。
永田音響設計のコンセプトに「静けさ、良い音、良い響き」という言葉があるのですが、
静けさの表現方法は、演奏家としていつも考えていることの一つです。
音が消えてすっと静けさに包まれるような演奏がしたい、と常々思っています。

おそらくパリのサロンで、ショパンは、そんな静けさに包まれた演奏をすることができたピアニストだったのではないか、と想像しています。
暗い蝋燭の炎の中で・・・。

歴史的楽器は、調律、調整がことのほか難しく、時代が移りゆく中でそういう不便が少しずつ改良され、安定した性能の製品となっていきます。けれどその進歩の中でとりこぼされた要素があるとすれば、香りや色かもしれません。
そういう要素を歴史的楽器から学び、それを現代の楽器での演奏につなげていきたいと思っています。

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