《幻想曲風ソナタ》

ベートーヴェンが自ら《幻想曲風ソナタ》と題したop.27ー1と2。姉妹作品とも言える2曲(変ホ長調、嬰ハ短調)のうち、
2の方は《月光》というニックネームで呼ばれ、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ32曲の中でも人気作品の一つです。

映画、ドラマ、CMなどにも使われる機会の多い、ジャンルを超えて愛される名曲です。
今回の朝日カルチャーセンター横浜教室でのレクチャー&コンサートでは、このソナタを取り上げ、歴史的背景、ベートーヴェンの人生のエポック、ハーモニー・リズム・旋律それぞれを分解しながら、その魅力にアプローチしました。

感興の溢れるまま、ファンタジーを巡らせる「即興演奏」の世界。ベートーヴェンは22歳でウィーンに出てきてピアニストとしてのキャリアをスタートさせ、一躍人気ピアニストとして活躍を始めます。貴族の屋敷では「即興演奏」を披露し、自らの作曲した室内楽作品を奏で、ピアノという楽器に感情の細やかな襞、溢れるロマンと激情を込め、豊かな語るような演奏をしたことが知られています。彼の手によって残されたソナタは、まるで即興をしているかのように聴こえる「緻密に考え抜かれた構築」があり、すべての音に意味がある音楽です。

自筆譜を見ていると、当時の軽いピアノから重々しい葬送のリズムを打ち、下降するバスに乗せて喘ぐような旋律を奏で、激しい波のうねりのような3楽章では一気呵成に駈け抜けるように演奏したベートーヴェンの姿が立ち現れてきます。

横浜教室に到着すると様々な分野の先生方が講師控室におられ、廊下を歩くと、美術、文学、政治、経済、社会史、文化史、ありとあらゆる分野の講義が行われていました。興味ある教室に寄り道したくなってしまう衝動を抑えてピアノの部屋の前へ。受講してくださる社会人の方も、演奏家、作曲家、大学教授、愛好家、文筆家、ピアノの先生、、、といろいろな方がお集まりくださいます。年齢、性別、あらゆる垣根を越えて「ベートーヴェン」の前では、全員が音楽を愛する友!

お世話になりました朝日カルチャーセンター横浜教室の皆様に感謝です。

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