ウィーンモデルのベーゼンドルファー

日本モーツァルト愛好会「ハイドンとモーツァルト」のリハーサルで光が丘美術館に行きました。
所蔵楽器は、ウィーンモデルのベーゼンドファー。
以前から是非、弾かせていただきたいと思っていた夢がかないました。
美しい屏風の前に置かれています。

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軽やかで、しかも気品のある音色で、今回の「ハイドンとモーツァルト」などウィーンものには、ピッタリと寄り添ってくれる楽器です。

お庭には、彼岸花が咲いていて秋の風情が美しい美術館でした。
「不思議だねぇ。彼岸花は、毎年忘れずに季節を覚えているもんだ」
と素敵な館主さんの温かい微笑みとともに、秋の一日を過ごさせていただきました。

美術館なので、音楽ホールとは違って、演奏中も屋根からスズメの鳴き声や鈴虫の声などが聞こえます。
そういった季節と自然を感じながらの演奏というのは、普段防音装置がバッチリと施されたレッスン室や音楽ホールでは味わうことがありません。
中の音が外に漏れないようにしているということは、外の音も遮断されているわけですから。
そのあたり、人口密度が高く騒音への配慮が完璧な日本では特にシビアです。

以前、ザルツブルクのミラベル宮殿でドビュッシーを弾いていると、窓から鳥が入ってきて、最後は、私の演奏と一緒に鳴きだしたときがありました。
引き終わったとたんに教会の鐘が聞こえたこともあります。
知り合いの調律師さんの話では、フランスでは救急車のサイレンが入ってしまっても演奏がよければOKが出たのだとか。
椅子がちょっとでもきしんだら「雑音!」「はい取り直し!」となる日本とは大違いのおおらかさ?!です。
でもモーツァルトの時代の建物、もしかしたら、馬車の通る音、雨の音、風の音、鳥の鳴き声、教会の鐘、あらゆる街の音が鳴る中での演奏会だったのかもしれません。
上野の奏楽堂のように「え~い、焼き芋~!」の声まで演奏途中に聞こえるのも考え物ですが、自然への扉が開かれている中での演奏は、静まり返った人工的な静けさとはまた違って、自然で気持ちの良いものだと思いました。

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