第20回「新日鉄音楽賞」

新日鉄音楽賞は、1990年、新日本製鐵創立20周年を記念して設けられた音楽賞。
その音楽賞も今年で20回を迎えました。
これまで写真家の木下晃さん、調律師の鶴田昭弘さん、永田音響設計の永田先生などが特別賞を授与され、ヴァイオリニストの諏訪内晶子さん、ピアニストの上原彩子さんらがフレッシュアーティスト賞を授与されています。

今年の受賞は、青木賢児さん(特別賞)、河村尚子さん(フレッシュアーティスト賞)でした。

はじめに青木さんの受賞トーク。
青木さんは、NHKのプロデューサー出身。
「NHK特集」などの報道番組を担当されました。報道出身ということで音楽担当、ということではないのに、その後は、NHK交響楽団理事長、宮崎県立芸術劇場館長など歴任しておられます。
アイザック・スターン氏を招聘するまでのエピソードというのが会場を笑いの渦に巻き込みました。

宮崎に招聘と一言で言っても、スターン氏は、
「日本に何度も行っているが、宮崎なんて知らないし、行ったこともない」と冷たい反応。
「テレビに出たい人をテレビに出すのは、簡単。けれど出たくない人に出てもらうのは至難の業。自分は、長年、その交渉をやってきた。それが生きた」
とのことで、アイザック・スターン氏を口説き落とすまでのご苦労話をユーモアを交え、お話しされていました。
宮崎の芸術劇場は、大中小と3つのホールを重ねる形ではなく平な状態で並べておかれているのだそうです。
広大な面積の敷地があったればこそ出来る平屋の贅沢です。
都会のホールは、土地の関係で重ねてつくらざるを得ません。
大ホールと小ホールが階を重ねて作られているので、地下の楽屋から上がる時、エレベーターのボタンを間違って押してしまえば、違うホールに出演してしまう?!ことになってしまうのです。
東京から観るとうらやましい環境を持つ宮崎芸術劇場。
宮崎からたくさんの応援団の方が会場にいらしていました。

後半は、フレッシュアーティスト賞の河村尚子さんのリサイタル。
通常のリサイタルは、45分を2回で、間に休憩を挟む、というスタイルですが、今夜は、表彰式の後、休憩、トークの後休憩、なので河村さんのリサイタルは休憩なしで1時間。
シューマンのアベック変奏曲に始まり、ブラームスの小品を4曲。ショパンの変奏曲、夜想曲、ワルツ、幻想曲、というプログラムです。

最後の幻想曲は、さすがに少し疲れが出てしまって、ミスタッチも目立ち、残念でしたが、コンクールで鍛えられてきた集中力とパワーで、文字通りフレッシュな演奏を展開されました。
スタッカート気味の切れのよいタッチが特徴の演奏で、特にショパンの若いときの作品、華麗なる変奏曲などが合っているように感じました。
鍵盤が見えない側で聴いたのですが、鍵盤が見えてくるような、ピアニスティックな演奏でした。

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