ベーゼンドルファーお披露目演奏会

オープンしたばかりの銀座ヤマハホール。
ベーゼンドルファーのお披露目演奏会ということで、猛暑の中、オーストリア大使ご夫妻はじめ、たくさんの関係者、ベーゼンドルファーファンが参集しました。

プログラムは、モーツァルト「ソナタK330」,ベートーヴェンの「ワルトシュタイン」、
後半が助川敏弥の「やさしい小曲」、シューベルトの「ワルツ」と「即興曲」2曲ずつ、最後は、メンデルスゾーンの「厳格なヴァリエーション」。

ピアニストの深沢亮子先生による演奏です。
深沢先生には、大学院を修了したばかりの頃、一度レッスンにお伺いさせていただいたことがありますが、その頃とほとんど変わらないお姿でした。

演奏中や舞台から下がるとき、どうも鼻風邪をひいていらっしゃるご様子。舞台挨拶でも、咳を何度もされながら
「私、夏風邪をひいてしまってこんな声ですみません」
とおつらそうでした。
「この舞台でデビューリサイタルをしたのですが、そのときのプログラムが残っていて、今日頂戴したんです。そしたらなんと今日のプログラムとモーツァルトもメンデルスゾーンも同じ曲だったんです!」
とのこと。
終わってから、友人の調律師さんが開口一番、
「深沢先生ってずっとお変わりにならないわね」
と一言。
ピアニストの中には、外見も中身もどんどん変貌をとげて目が離せない、
というタイプの人も多くいますが、そのような中にあって、レパートリーも容姿も雰囲気も変わらない、変えないというピアニストは、逆にとても珍しいことかもしれません。

そういえばベーゼンドルファーの工場に行った時、たくさんの女性が働いていて
「何故こんなに女性が多いのですか?」
と工場長さんにお聞きしたところ
「男は、いろいろ考えて発展させようとか進歩させようとか、いろいろ変えたがるんだ。けれど女性は違う、毎日同じ事を同じようにやっても飽くことなく繰り返すことができる。すでに完成された楽器であるベーゼンドルファーは、変えるのではなく、その伝統を守る人が造るほうがいいのだ」
とおっしゃっていたのを思い出しながら、
「変わらない」
ことの素晴らしさを感じてのファンがついていらっしゃるのだと思いました。
「このベーゼンドルファー、まだ新しくて音が充分出ません。みなさんどんどん弾いて頂いて良い響きが出るよう、私も機会があれば弾きたいと思います」
と締めの挨拶をされて、アンコールとして、ショパンのマズルカとトルコマーチを弾かれました。

帰りの地下鉄で、プロの写真家とおぼしき隣の男性が、鞄から一眼レフのカメラを取り出し、撮影写真のチェック開始。
なんと今見てきた深沢先生のステージ写真でした。グリーンのドレス姿、大使との記念撮影など、きっと来月号の音楽雑誌に掲載されることでしょう。
銀座での年輪を感じる演奏会でした。

コメント

  1. nishisan より:

    ピアノの製作にかかわる女性の特質、
    そうですか。