奇跡の「クラーク・コレクション」

クラーク夫妻のコレクションによる展覧会を鑑賞しました。
シンガーミシンの設立者エドワード・クラークの孫、ロバート・スターリング・クラーク、妻は、彼がパリで恋におち結婚した相手、フランシーヌです。
クラーク夫妻によって収集された絵画の数々を集めた展覧会が、三菱一号館美術館で開かれていると聞き、カワイでの講座のあと、青山から東京駅に向かいました。

30点のルノワール作品をはじめ、ピサロ、シスレー、モネなどの印象派絵画が一堂に並びます。
クラーク美術館はボストンから車で3時間走った森の中にあるため、観光客がほとんど訪れることはなく、日本でもあまり知られてきませんでした。今回の展覧会は、日本での初公開となります。
ご夫妻の好みと個性がはっきりと表れているコレクションでした。
「人生を美しく生きる幸せ」という謳い文句にもあるよう、美しい絵画が並びます。女優でもあった夫人の審美眼を高く評価していたクラーク氏は、高すぎると思って購入をやめ、画廊から出た後、夫人の一言で画廊に戻り、を入手した、ということもあったのだそうです。
家の中に飾る目的で集められた絵画たち。
巨大なものはなく、見ていて心地良く、圧迫感のない作品が揃っています。とはいえ、日本の住宅感覚では一つあれば充分という絵が膨大な数に上っているわけですから、その巨大な富には驚くばかり!

ルノワールの「鳥と少女」の色の美しさはため息が出るほど。
ジャポニズムの影響を受けた「うちわを持つ少女」も、画集では味わえない色合いのハーモニーに引き込まれました。
何かをしているところ、たとえば一心に編み物をしているとか、手紙を読んでいるとかの絵が多く、夫妻の好みでもあったようです。
私が一番惹かれたのは、モネの「ジヴェルニーの春」です。
1890年に描かれたこの絵、日本庭園ができる前、家を借りた直後に描かれたそうですが、色と質感のバランスが絶妙で、タッチがしっかりしているのに、全体が軽やかな印象で、空気が伝わってくるような温かさがあります。近くで見るとただの白いスペースなのに、遠くから見ると木立に隠れた家ということがわかります。

フランス絵画の香りを浴びたあと、美術展横に出店していたニコル・ウークのコテ・バスティドに寄り、フィギエのクリスタルポプリを買いました。イチジクの幹から抽出されたフィギエという名前のポプリ。森の中にいるような南仏の香りです。
日本では神戸が本店のようです。

マサチューセッツ州西部のバークシャーにあるクラーク美術館。一度訪れてみたくなりました。

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