カワイ講座・バッハのインヴェンション

「続々々」と、4シリーズ目に入ったカワイのピアノ演奏法講座。
今回がシリーズ最後の回となり、バッハのインヴェンションを取り上げました。
先日も国立音大入学試験の課題曲として、たくさんの受験生たちの演奏を聴かせていただいたインヴェンション。バッハがケーテンの宮廷楽長をしているころにまとめられた曲集です。
もともとは、長男フリーデマンの教育目的で書かれた作品ですが、単なる学習帳ではなく、技法的にも音楽的にも完璧なつくりになっていて、いつも弾くたびに驚愕する作品群です。

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ひとつの楽想が、拡大されたり、移調されたり、左右の受け持ちを交代したりしながら完璧にモチーフが積み上げられていく様は、とても人間業とは思えません。まさに音楽が編み上げられていくというイメージです。
対位法の授業をとったことがありますが、普通の学生にとっては、禁則を犯さずきれいにまとめる、というところまでが精一杯。しかし、バッハの場合は、そこにあらゆる感情を埋め込み、色合いを変え、リズムの冒険をし、遊び心も加え、かつ美しく調和した建築物になるのです。
アナリーゼが演奏につながるよう、音から何を読み取るのかが問われます。現代のピアノで、読み込んだものをどう音として表現するのか ― インベンションを弾いていると、深い森に入りこんでいくかのような感覚に襲われます。
けれど、テーマを見つけ、音の形を探っていく過程は、パズルを解いていくような悦びがあります
いくつかの原則や様式感などクリアするハードルはあり、感情におぼれないというバランス感覚は必要ですが、自由な精神とロマン、宇宙的な広がりを感じることができるのがバッハです。
2時間で3曲を取り上げる予定でしたが、2曲が精一杯でした。
それでもまだまだお話ししきれないことが残り、アンケートでも
「インヴェンションの続きをお願い」
というご意見をたくさんいただき、次回のチクルスで、続きをさせていただくことになりました。
来年度またバッハでお会いしましょう。
お世話になりましたカワイのみなさんと、記念撮影。

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多くの受講生のみなさんが朝早くからいらしてくださり、いくつもの出会いをいただいてきたカワイの演奏法講座。
「続々々々」では、ゾクゾクゾクゾクで寒い感じがするので、名前を変えましょう、と言われています。
ネーミングを変えて来年またお会いしましょう!

コメント

  1. YUKO より:

    spicaさま
    タイトル付!なるほど!!です。
    2曲をセットするのも大変ですが、
    1曲より2曲にタイトルをつけるのは至難の業ですね。
    そろそろ日程を決めなければならない時期なのですが、
    タイトル付と一緒となると・・・。筆が止まってしまいそうです。
    タイトルといえば、、、
    モーツァルトのソナタにもタイトルをつけたい!と日頃思っています。
    タイトルのせいでメジャーになったベートーヴェンのソナタ同様、
    初期のソナタも演奏回数が増えるのではないかと思っています。

  2. spica より:

    【訂正とお詫び】
     直前の投稿(3番)で、「久本」さまとありますのは、もちろん、すべて「久元」さまの誤りでした。申しわけございませんでした。
     お詫びのしようもないほどの失礼をいたしました。どうかお許しを願います。

  3. spica より:

    久本さま。
    私ごとき者のコメントに、いつもご懇篤なお返しを賜り、恐縮いたしております。
    「インヴェンションのほうが、作曲楽的にも…」の箇所、驚きと(かなりの程度の)喜びを感じつつ拝読いたしました。後出しジャンケンではありませんが、やはり、さもありなん、という思いです。ありがとうございました。
    でも3声も大事にします(笑)。最近ピ-ター・ゼルキン氏の録音版を発見いたしました。全30曲に加えて「デュエット」4曲 (BWV 802 – 805) がおまけに入っているそうです。
    ◆ シリーズタイトル
    各回の講座でお取り上げになる2曲はどのような組み合わせとなるのかは存じませんが、聴衆の印象に長く残るのは、無味乾燥なエピソード回次の数字ではなく、その数字のあとに、久本さまが添えてくださる「珠玉のような五六文字」であろうかと存じます。例えば(下手すぎる例ですが)、
    < エピソード I - 忘我の二分間 >
     すると聴衆の中には、
     「あれは何回目だったか忘れたけれど、何でも”忘我の二分間”という副題のついた回だったわ」
    というような記憶の仕方をし、それがキーとなって、その回の久本さまの演奏とお話が明瞭によみがえってくる…そういう方もあるかもしれません。
     その回に演奏なさる2曲の特徴を短い言葉に圧縮する作業が久本さまのご負担になってしまいますが、この講座がご自身の手作りのプログラムにいっそう近づくという意味では、ご苦労の甲斐もあるのではないかと、僭越ながら、拝察いたします。
     おたいへんでしょうが、この短い言葉は、お弟子さんが「先生、私に考えさせてください」と”自発的に”申し出るかもしれませんものね(笑)。

  4. yuko より:

    spicaさま コメントありがとうございます。インヴェンションは、シンフォニアに比べて声部の面でも単純と思われがちですが、インヴェンションのほうが、作曲楽的にもアナリーゼがすごく大変なのだそうです。よくぞここまで・・・という完成度の高さは、信じられません。
    素材の素晴らしさがアレンジの意欲をかき立てるのでしょうね。
    spicaさんと一致した選曲、私も聴いてみたいと思います。
    エピソードシリーズ、スタッフの方に提案してみます!楽しい感じでいいですね。
    先日のアンケートで「インヴェンションの続きを・・」というお声が一番多かったので、そのように考えているところです。2時間で2曲ずつとりあげるのが限度なので、6回か7回になってしまいますが。
    バッハのインヴェンションにちなんだタイトルもいいのでは?と思っているのですが。。。
    いかがなものでしょう?

  5. spica より:

    先般の「音楽帳」に次いで、わたしの大好きな「2声のインベンション」についてお話がうかがえて。たいへん嬉しく思います。
    若いころにこの作品への目(耳)を開かれて以来、聴くほどに愛着が深まります。
    最近おもしろい発見をいたしました。ジャック・ルーシェの率いるトリオ(通称「プレイ・バッハ」)は文字通りバッハなどの作品をクールなジャズにアレンジして演奏しており、わたしも大好きなグループですが、ある録音で彼は「インベンション」から5曲抜粋しておりまして、それが何と第1,8,13,14および15番という、わたしが最も好むものと、過不足なく、ピッタリ一致しているのです。
    だれの思いも変わらないのか、と思った次第です。
    追伸 ゾクゾクの件ですが、「エピソード N」はいかがでしょうか。ここで N にはローマ数字(I, II, III, etc.)を充てることといたします。何かの映画みたい、といいいますか、まるっきり剽窃ですが(笑)、ご一考を煩わせたく。