「私の印象派」

先日、三菱一号館美術館で開催されている「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」~私の印象派。~に行きました。

http://mimt.jp/nga/

モネの「アルジャントゥイユ」は、淡い光の中に浮かぶヨット、水の反映、雲の動き、木々の間から注ぐ日の光、、、まさにドビュッシーが聴こえてくるような風景でした。

今回の展覧会は、アメリカの実業家であり美術収集家、アンドリュー・メロン(1855~1937)の長女エイルサ・メロン(1901~69)による印象派とポスト印象派のコレクションです。メロンは、父のコレクションの中で育ち、そこで培われた独自の審美眼と繊細な感性で、莫大な資産を投じ、自ら膨大な収集を行っていったそうです。

社会的な地位を誇示したり、大作で人を圧倒させたり、という外向きの意図や権威主義は全く感じられず、そこにあるのは、あくまで親密な空間で楽しむことを前提にした私的な世界でした。

ゴーガン、セザンヌ、ルノワールなど、印象派を代表する異なる個性の画家の作品がずらりと並んでいるのですが、そこには一本、エイルサの知的な眼差しで選び抜かれた、たしかなコンセプトが通っているように思えました。描かれる対象やテクスチュアが違っても、そこにある種の共通点が感じられるのです。

会場には、エイルサの美しい写真が飾られていました。これも一つの肖像画と言っていいほどの魅力的な表情でたたずむエイルサ。孤独の影を宿しながら、知的で、内向的で、しかも強い意志のある顔立ちです。不幸な家庭に育ったエイルサが絵画に求めたものは、優しさと心の安らぎだったのかもしれません。

芸術を愛した一人の女性による”親密な空間”は、凛とした空気と優しさに満ちた波動を作り、見る人それぞれの「私」に温かい何かを残してくれるコレクションでした。
「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」は、5月24日まで開催されています。

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