FD

FDと聞いて、車の型番を連想される方、フロッピーディスクの略と思われる方もいらっしゃるかもしれません。大学では数年前からFDが一年に1回行われてきています。Faculty Development・・・教える技術や方法の向上の意味で使われています。

今日は、3人の先生の発表がありました。トップバッターは大類朋美先生で「ティーチングアーティスト育成」について。若いころ、私がレクチャーコンサートを行ったころは、「音楽家は演奏に集中するべきで話すべきではない」と様々な方から忠告されましたが、今では音楽家が演奏以外に様々なことを要求される時代になり、それにどう対応していくか、即興能力、話術などの教育が課題となっています。主に管楽器を専門としている学生の副科ピアノのレッスンが対象となっていましたが、卒業後、ピアノ専門の学生のほうが、必要となるケースが多いように思えます。

次に進藤郁子先生が「思考能力育成」について。授業中、レッスン中の声がけを分析され、その結果を発表されました。思考スキルの6段階を研究したベンジャミン・ブルーム(改定版)を紹介。レッスン中にかけている言葉が、「記憶」、「理解」、「適用」、「分析」、「評価」、「創造」のどれにあたるかの統計をとる研究です。レッスンを記録し、それをテープ起こしし、すべての言葉がそのどれに当たるかを分けていく大変な労力と作業に脱帽でした。私の大学時代の師匠、松浦豊明先生は、「どいていみて」の一言のあと演奏され、生徒は、ひたすら聴き、盗み、感じ、学び、自らつかむほかはありませんでした。ブルームで分類するとかなり低い点数というか、分類以前のレッスンですが、演奏そのものが言葉であり、声がけだったのかもしれません。

最後に安井耕一先生が、「音楽を教えるということ」と題し、これまでの教育経験をお話しされました。芸大に14年、国立に10年おられ、様々な学生を育てる中で、お感じになられたことが披露されました。中途半端な優等生、感じているふりをして感じていない学生に対峙した経験。逆に、素直でひたむきに努力し、伸びていった学生との交流。そして精神論、音楽論、哲学に話題が及び、「毎日の積み重ねが心を作る」「見えないものを見えるようにするのが教育」「言葉が精神を作り、精神が音楽を作る」という重い言葉で締めくくられました。

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