ウィーンの言葉 サとザ

日曜日の鐘の音は、いつもと違い、けたたましく連打されます。「ミサに来ない者は、許さん!」と聴こえてくるのは私だけでしょうか。お店も学校もお休みの街中は、いつもより人通りも少なく静かです。幼稚園もガランとしていました。

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アルテス ラントグートにある練習場通いも3日目に入りました。こちらの地下鉄は自分でボタンを押してドアを開けなければ、じっと立っていても開いてくれません。日本でも寒い地域にはそういう電車がありますが、ほとんどは自動ドア。

改札がない代わりに、たまにコントローラーがチェックに来るという仕組みです。有効期限内のウィーンカードを持っていれば改札も素通り。荷物を持ったときなど本当に便利です。すべて「自己責任」というわけで、乗客を大人として扱っている?!仕組みです。

練習のあとはカフェ、オベッラー(Oberlaa)へ。にぎやかな女子会となりました。サラダを軽くいただいたあと、アップルシュトゥルデル、マリア・テレジア、レモンケーキなどウィーンの甘味処をメランジェとともに満喫。

午後はマリア・テレジアはじめ栄華を極めたハプスブルク家の人々が眠るカプチーナ教会へ。驚いたのは、前回来た時には空き室だったお部屋に新しい棺が納められていたことです。ハプスブルク家の血筋が脈々と受け継がれ、今も末裔の貴族が歴史を刻み続けていることを実感しました。

夕方は、ハイリゲンシュタットにあるベートーヴェンハウスへ。2020年のベートーヴェンイヤーに向けてか、改装が完了。観光向けに壁にはわかりやすく番号がふられ、以前の素朴なイメージとはだいぶ様子が変わっていました。日曜日はなんと入場無料!

ベートーヴェンの髪や直筆の手紙や口述筆記ノートなど、何度見ても鳥肌がたちます。シュトライヒャーのフォルテピアノが置かれ、ナネッテの肖像画が飾られ、彼の人生を辿れる仕組みです。

ハイリゲンシュタット

ベートーヴェンの耳が聴こえなくなっていく過程をヘッドホンで聴き、体験できるコーナーを試してみました。だんだん音が遠くなりはしているのですが、意外と聴こえてくるのです。ただ音楽家にとっ超力が弱まることの苦悩は、想像を絶する苦しみだったことに違いありません。
奏者に聴こえるように設計されたピアノも復元されていました。

ナネッテ・シュトライヒャー

夜はベーゼンドルファーのサビーネ社長さんのお招きで、ホテルザッハのディナー。ピアノのこと、ウィーン音楽界のこと、最近行われたバドラ・スコダ氏の90歳バースディコンサートのことなどお伺いし、ベーゼンドルファー・ピアノの新機種について技術的なことについても意見交換をさせていただきました。

温かく気さくなサビーネ社長さんは、息子さん2人のお母さんでもあります。これまでザビーネさんとお呼びしていたのですが、「ドイツ語ではザビーネだけれど、ウィーン訛りではサビーネとなるのよ。ベーゼンドルファーの音色と一緒で、柔らかい感じでしょ?」と優しいまなざしで微笑んでおられました。ウィーン風に呼ぶとザッハホテルではなくサッハホテルなのだとか。Sの発音をサにするか、ザにするかで、たいぶ印象が変わります。

明日は都内のホールに入るベーゼンドルファーの楽器選定。早めに休み耳と体調を整えました。

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