表参道、そして音風景

今年の4月はあたたかい!
汗ばむほどの陽気に、街行く人の群れにも、Tシャツ姿の「季節先取り族」まで登場。

午後、打ち合わせのため表参道に向かいました。
相変わらずファッショナブルな雰囲気の通りには、ファッション雑誌から飛び出してきたようなモデルさんとおぼしき女性も闊歩しています。
一見不況知らずに見える通りですが、よ~く見るとジワジワと様子が変わってきています。
高級化粧品店がつぶれてスーパーに変わっていたり、以前はリッチな雰囲気のお客様で賑わっていたブティックにも人影がほとんどありません。

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少し早めに着いたので、ランチをしようと、人気のクレープ店に入りました。
グリーンピースのスープとそば粉ガレット、そしてプレーンなクレープにカプチーノ。ちょっとパリジェンヌ気分です。
この店は、BGMをかけていません。
音を鳴らして賑やかな雰囲気を出さなくても常に人がいっぱいなので、その必要がないのです。
隣のテーブルには、2組のフランス人夫婦が楽しげに語らいながらクレープに舌鼓を打っていましたが、BGMが流れているより、4人のフランス語の響きのほうがずっと素敵なBGMでした。

日本のレストランは、ほとんどBGMが流れていますので、コンサートの打ち上げにも音楽のかかっていない店を探すのは難儀です。
先日、モーツァルトの演奏会の打ち上げ会場でモーツァルトが鳴っていたのですが、そのレストランに入るなり、ベテランクラリネット奏者の方が、
「一日中モーツァルト吹いたあとで、他人のモーツァルト、聞きたくないよなぁ。CD止めてくれない?」
とレストランのお姉さんにお願いして、やっと静かになりました。

以前行った温泉のリラクゼーションルームでは、同時に3種類の音楽が聞こえてきて呆然としました。
おそらくマッサージコーナーから聞こえるバリ島音楽、隣の整体の部屋から聞こえる和もの、そして食堂からクラシック、と出所は違うのでしょうが、防音しているわけではないので、すべてが聞こえてしまうのです。
働いている方たちは、慣れているのか、仕事だからと我慢して聞いておられるのでしょうか。

音楽をやっている人間は、音を聴くと、同時に目の前に譜面が広がる体質なので、リラクゼーションどころか、3人分の仕事をしているような気分になってしまいました。

頂上でそよ風の音に耳をすまそう、と頑張って山を登ると山頂休憩所でスピーカーから演歌が大音量で迫ってきたり、ケッタイな編曲の音楽がレストランで流れていて食べている最中、吹き出しそうになってしまったり、混んだ車内で隣からジャカジャカジャカというウォークマンの音が聞こえ続けて辟易したり・・・とBGM公害の被害者は、けっこう多いのではないでしょうか。

虫の音を風流と感じ、水の音で俳句を詠み、香りを聴くような繊細な日本人の静けさと聴力は、いずこへ?
などとつらつら思いながら、ベビーグリーンの美しい表参道を歩き、家路に着きました。

コメント

  1. yuko_hisamoto より:

    >  わたしの職場でもわけのわからないBGMが流されています。わたしは苦痛でなりません。たまに生徒や保護者からも苦情が寄せられるのですが,あまり強い意見がないからか,無視され続けています。
    >  でも,わたしは時々黙って止めています。
    コメント、ありがとうございました。
    私の知人で、夏、飛行機に乗ったら、大音量でBGMが鳴らされていて本も読めないし眠ることもできない騒々しい音だったので「すみませんが、ボリュームを下げてもらえますか?」と客室乗務員さんにおそるおそるお願いしたところ意見がすんなり通ってBGMを止めてくださったそうです。「夏休みなのでお子様たちのためにとBGMを流しておりましたが、たしかにビジネスや静かな旅をお望みの方もいらっしゃるのですね。失礼しました」という返答だったそうです。即座にそういう対応をしてくださったその飛行機のBOSSは、なかなかの人だと思いました。
    >  だって,テスト中のBGMなんて考えられますか!?
    耳は完全に音楽に行ってしまって答案を書くのは不可能ですよね!
    >  わたしのブログでも記事を書いてみました。よろしければ覗いてみてください。
    BGM公害の記事、膝を打ちながら拝読させていただきました。音楽を聞き流せる人たちにとっては、空気清浄機のスイッチを入れる感覚で音楽を流しておられるのでしょうが、聞き流せない音楽畑の人にとっては、つらいですよね。
    無意味に音楽を鳴らす習慣がなくなり、静かな時間を持つことができるよう、聞くときに聞く、聞かないときに聞かない、というのが当たり前の社会になるよう、願っています。

  2. ちょこママ より:

     こんにちは。中学校で教えています。専門は音楽です。
     わたしの職場でもわけのわからないBGMが流されています。わたしは苦痛でなりません。たまに生徒や保護者からも苦情が寄せられるのですが,あまり強い意見がないからか,無視され続けています。
     でも,わたしは時々黙って止めています。
     だって,テスト中のBGMなんて考えられますか!?
     わたしのブログでも記事を書いてみました。よろしければ覗いてみてください。

  3. 風子 より:

    こちらこそ、素敵な時間をありがとうございました。
    今までに無い、音楽の話の中に浸れた素敵な誕生日でした。とてもいい記念の日でした
    カニちゃんが 美味しくてよかったですね
    風子は 「そよそよ、さやさや」をイメージしてました。本当の自分とは 程遠いかも
    こんどは、上京して素敵な演奏を聴きに伺いたいです。
    では~~~~

  4. yuko_hisamoto より:

    昨日は、お誕生日、おめでとうございました。
    いろいろとお世話になりまして、本当にありがとうございました。
    ご一緒させていただきました楽しいひととき、感謝しています。
    >生徒と、何時間も音のやりとりをしたあと、居間で音楽がかかっていると、耳が「静>寂」を欲します。
    お気持ちわかります! 
    耳が「静寂」を求める時間、同感です。
    先日、ある番組を見ていましたら、耳の疲労って本当にあるそうですね。
    目が疲れたとか、足がだるいとか、肩がこるとかいう肉体疲労は、わかりやすいそうですが、耳の疲れというのは、なかなか表に出なくてわかりにくいのだそうです。

  5. 風子 より:

    深夜おじゃまします・・・こんばんは~
    私は、近所の子供たち数人にピアノや歌を教えています。専門は声楽なんですが・・・・
    お気持ちよくわかります。よく家事をしながらCDをかけている人がいるらしいのですが、私はついつい一生懸命聴いてしまって、BGMにはできません。
    シューマンの歌曲が流れてきたら、鼻歌ではなく、ついつい真剣にブレスまでその気になってしまい、疲れちゃいます
    生徒と、何時間も音のやりとりをしたあと、居間で音楽がかかっていると、耳が「静寂」を欲します。
    サラサラ ソヨソヨ の世界にたまに行きたいです