「江森ピアノ」訪問

群馬県にある江森ピアノさんまで出かけ、エラール、シュトライヒャーを弾かせていただきました。
来年1月に浜離宮ホールで開催される調律師協会主催コンサートではエラールを弾かせていただくことにしていますが、このエラール・ピアノの試弾のためです。

高速道路を降りると、黄金色に実った稲がたわわに揺れていて、見事な秋の風景です。気持ちの良い田園風景の中に、江森さんの工房がありました。
たくさんのピアノの中から、今日は、エラール、シュトライヒャーの2台を中心に弾かせていただきました。
もともとはエラールを弾かせていただくためにお邪魔したのですが、昨年、江森さん所蔵のシュトライヒャーをコンサートで弾かせていただいたことがあり、その音色に感激し、どうしても!とわがままをお願いして、2台弾かせていただきました。
2台並ぶと、それぞれが誇らしげにその個性と存在を主張するようでした。ピアノの原点ここにあり、という感じで、タッチや音色など、ロマン派の頃に思いを馳せることができました。

リストが愛したエラールは、まろやかでかろやかで華やかで、、、ブラームス愛用のシュトライヒャーは、味わい深く、いぶし銀のような輝き。
まったく違うタッチなのですが、それぞれに魅力的です。
シュトライヒャーの方は、現代のグランドピアノとはタッチがかなり違いますが、しばらく弾くと慣れてきて、一個一個の音の飛び出し方がポンポンと小気味よく、楽しくなってきます。

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産業革命を経てつくられたイギリスのエラールは、さすがになめらかな動きで弾きやすく、こまやかな息づかいやピアニッシモの微妙な音色を表現してくれます。

ショールームの隣に工房があり、ちょっとおじゃましますと、スタッフの皆さんが、懸命な作業の真っ最中。ピアノの鍵盤の前をローラーで移動しながら、こまかにタッチをそろえていく作業。奧では、ハンマー交換の作業。

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大手術が必要な楽器もあれば、こまやかな治療で驚くほど調子が良くなる楽器もあり、
一台、一台のピアノの特性をつかみ、最適な処置を施していく作業が続きます。
長年の経験と勘と地道な積み重ねによって可能になる世界、心から感服しました。研究会も多く行われているそうです。

ピアノに向かう江森さんはじめスタッフの方たちの姿に感動。こういう工房のみさなんの力があってはじめて、ピアノはいい音を鳴らしてくれているのだ、とあらためて感じた一日でした。

工房の外にあるテーブルで、しばしコーヒータイム。
なんと江森さんは、コーヒーの生豆を仕入れ、ご自分で鍋で煎って、、、という徹底ぶり。普段、挽きたてコーヒーは、飲みますが、なかなか焙煎直後というコーヒーには、お目にかかれません。いい空気の中で、自然で薫り豊かな絶品コーヒーでした。
近くに稲穂が揺れているにもかかわらず、なんだかヨーロッパの工房にいるような錯覚にとらわれました。

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