基礎ゼミ室内楽コンサート

満開の桜とともに入学式。新入生は4年間の大学生活のスタートを切りました。国立音大では、入学式の後、新入生のためのオリエンテーション、履修相談、「基礎ゼミ」が行われます。コンサートでは先生方のパフォーマンスをまじかで聴き、クラス授業を通じて、共に学ぶ仲間と顔合わせしたり、レポートの書き方を学んだり、大学の設備を使いこなすための施設見学も付いています。手厚いサポート体制のもと、至れり尽くせりの1週間です。

今年は室内楽コンサートに出演。チェンバロ(大学所蔵のミートケ・モデル)でバッハとヘンデルを弾きました。
大ホールで弾くバッハのゴールドベルク変奏曲の《アリア》は能動的に耳を澄まさなければ聴こえない音量。けれど逆に繊細な音は、しわぶき一つない静謐な客席を作ってくれます。この2か月あまり修理と調整が続き、心配の中でステージに乗ったチェンバロでしたが、調律の池末隆さんの技術と愛情により蘇り、大学スタッフの皆さんの細やかなメンテナンスのおかげで、ジャーマン・チェンバロらしい、遠くに届く芯のある音を出してくれました。

ヘンデルの《ヴァイオリン・ソナタ ニ長調》は、版によってかなり音が違います。明るいニ長調で再現する箇所で、版によっては短調のひねった和声がつけられていたり・・・。ここはどっちの音を選びましょう?の打ち合わせの段階から楽しい時間でした。

永峰高志先生(ヴァイオリン)、藤森亮一先生(チェロ)とともに。

この曲は永峰先生が10歳の頃にレッスンを受けた曲とのこと(こんな難曲を弾けてしまう10歳?!)。最初の1小節で30分しごかれたと想い出を語ってくださいました。ストラディバリウス「ヨアヒム」の美しい響きは大ホールの空間に伸びやかに飛んでいきました。

時代と様式によって奏法と音色を自在に操られる藤森先生。通奏低音の難しく細かい16分音符もいとも軽やか。無駄な動きが全くありません。名手の低音弦に自分のバス音を重ねながら弾く歓びを当時のチェンバロ奏者も感じていたことでしょう。

後半はモーツァルトのクラリネット五重奏。天に昇るかのような透明感、嘆きのモチーフの嗚咽、喜びと躍動、変幻自在でしなやかな流れ、、。アンサンブルのくにたちを体現する名演でした。クラリネットの武田忠善学長はじめ、室内楽コンサート出演者大集合。

お疲れ様でした!の掛け声のあと余韻に浸る間もなく、3分で着替えをし、クラス授業の教室へダッシュ!体力勝負の基礎ゼミコンサートでした。

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