FD コジ・ファン・トゥッテ 

オペラスタジオで行われた国立音大大学院声楽専攻オペラコースFDの公開授業。
10月28日、29日のオペラ公演に向けての緊張感と高揚感の中で、演技指導、声楽指導の仕上げの様子を興味深く拝見しました。

福井敬先生ら、オペラ担当の先生方の指導のもとで4月から『コジ・ファン・トゥッテ』に取り組んでこられたキャストの皆さん。
今日のFDでは第1幕、第2幕冒頭が取り上げられ、指揮の伴哲朗先生、演出の中村敬一先生の指導が行われました。

フォルテピアノで弾き振りされるマエストロ。変幻自在な通奏低音からは音楽とともに言葉と表情が聞こえてきます。

母音、子音、音程など細やかな歌唱指導に加え
音の方向性は?不意打ちの音なのか、本筋の音なのか、寄り道の音なのか・・・。
裏拍の勢いでテンポが変わったことを感じさせる。
点でなく面で合わせる。
最高のモチーフをどう歌うか、マンネリに陥らないためには?
自由な余白や隙間が無いと音楽が窮屈になる・・・etc.

緻密な指示を通してウィーン流の音楽の極意を学生達に伝えておられました。

同時に中村敬一先生からは、演技指導が行われます。

「騙しているのは誰か、騙されているのが誰か、誰が嘘をついているのか、誰が本当のことを言っているのか が見えてこない。
みんながいい人に見えちゃ構造が浮かび上がらないよ。」と厳しい一言。
愛情、そして表裏一体の感情、狡さ、脆さをもあぶりだすモーツァルトの人間表現。それをアンサンブルを通じて演技していくオペラの世界。
見ている方は、最高に楽しいけれど、オペラの舞台に立つ声楽家をあらためて尊敬!
それにしても、舞台の端から端はもちろんのこと、全員の動き、空間、歌唱、言葉、表情、すべてに目配りされている中村先生に、いつもながら驚愕!

一流の指導者に恵まれ、スポンジのように吸収し、最高の環境で、自らの力の限りをぶつけながら、本番に向け磨いていく若いエネルギーは頼もしい限り。

音楽にひたむきに打ち込み、毎年10月に行われる大学院オペラでデビューし、その後、大きく花開く若き声楽家達。
公演まであと2週間。素晴らしい舞台になることを願いながらオペラスタジオを後にしました。

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