ON BOOKS advance の新刊、リヒャルト・シュトラウス:ばらの騎士(音楽之友社)。あまりの面白さに夢中になってしまい、電車を乗り過ごしそうになりました。「もっときわめる!1曲1冊シリーズ」の第7巻。
著者は、ヨーロッパ文化史のオーソリティ、小宮正安先生です。作曲当時のウィーンの世相を背景に、『ばらの騎士』を解剖。
楽曲解説というと、難し過ぎて逆にその曲が嫌いになった、、、なんていうものもありますが、小宮先生は、複雑なこと、難しいこと、深いことを、わかりやすい言葉で整理し、優しく語ってくださいます。手を引いてその世界に分け入り導く・・・まさに本来の「手引書」。
華やかな舞台に込められた人間世界の真実、一つの台詞の裏にある本当の意味、登場人物の名前の由来など、「あーそうだったのか」と目から鱗の連続でした。
『ばらの騎士』のサブタイトルは「三幕からなる音楽のための喜劇」ですが、この本も3章からできています。
第1章は『ばらの騎士』誕生を巡ってR.シュトラウスと台本のホーフマンスタールを取り巻く状況から始まります。第2章で実際の音楽の進行とともに曲の魅力が語られ、第3章で上演史とディスコグラフィ紹介という懇切丁寧な構成。
私の中では、モーツァルトの『フィガロの結婚』とワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』をたしてニで割ったようなオペラ!なんて勝手にイメージしていた『ばらの騎士』。
ゴージャスなハーモニーと多彩なオーケストレーションと超絶技巧歌唱の向こうに見える真実と虚構。
ファンの方必読、そうでない方はこの本でファンになること必至の1冊でした。
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