The Real Chopin ×18世紀オーケストラ

2010年ショパンコンクールの覇者、ユリアナ・アヴデーエワさん、2018年ショパン・ピリオド楽器コンクール優勝者トマシュ・リッテルさん、第2位の川口成彦さんと18世紀オーケストラの協演。3月7日桐朋学園宗次ホールでの公開リハーサルの一部を拝聴しました。

1981年にリコーダー奏者フランス・ブリュッヘンによって創設された18世紀オーケストラ。2014年にブリュッヘン氏が亡くなられた後も活動が続いています。
1985年から93年までこのオーケストラのメンバーだったチェロの鈴木秀美先生も会場にいらしておられ、コンサートミストレスにソリストとのバランスなどアドバイスされておられました。

指揮者無しで演奏されるコンチェルトということで、室内楽的にコンサートマスターがピアニストの息を感じながらの演奏。
ピアノをオーケストラの中心に置き、管楽器奏者はピアニストの背中とコンサートミストレスの合図の両方を察知しながら合わせておられました。

アヴデーエワさんの溌剌とした現代的なショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ。今回使用されたピリオド楽器のピッチがかなり低いため、「華麗」というより「重厚」なポロネーズに聴こえましたが、さすがのテクニックと安定感。
かつてのショパンコンクール優勝者アルゲリッチが2012年にブリュッヘン指揮の18世紀オーケストラとエラール(1849年製)で協演した名盤が残っていますが、歴史的楽器経験が今後のアヴデーエワさんの音色にどんな広がりをもたらすか楽しみです。

続いてリッテルさん登場。昨年、国立音大でレクチャーコンサートをお聞きした時より、一回り大人の落ち着いた雰囲気になっていて、すでに円熟の境地を感じさせる演奏でした。古楽器の鳴らし方を知っているせいか、一つ一つの音が宝石の粒のように客席に飛んできます。休憩時間も寸暇を惜しんでパッサージュを丹念に練習するリッテルさん。

リハーサルでは、合わせのタイミングなどを念入りに返しながら丁寧にアンサンブルを磨いていく過程は見事でした。
リッテルさんのピアノ協奏曲第2番のロマンティックな音色と3楽章のリズムに引き込まれましたが、演奏機会が少ない演奏会用ロンド「クラコヴィアク」では、ポーランドの独特の民族色の魅力が全開。かつてショパンがウィーン・デビューコンサートで演奏し大成功をおさめたことを彷彿とさせるような、歌心あふれる演奏でした。

桐朋学園宗次ホールには初めて伺ったのですが、以前ネットで見た動画の感じでは、残響が長くて音がまろやかに響くホールかと想像していたのですが、むしろ一つ一つの音の輪郭が明確に聴こえる感じで、授業やレッスンで使われる横使いのホールとして「学び」の空間に最適であるように思えました。

好感度抜群の川口成彦さんにもお会いできて嬉しいひとときでした。
オペラシティでの本番の成功を祈りながら、会場を後にしました。

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