ドラマティックなピアニストたち

ピアニストが語る!シリーズ(アルファベータブックス)3冊を読み終えました。
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「音楽をめぐる商業主義とコンクールの弊害に憤り、真の音楽家はどうあるべきかを真摯に語る」第1弾では、著者(インタビュアー)のチャオ ユアンプ氏の熱い音楽への想いと、14人のピアニストが本音で語り合う、衝撃的な1冊でした。
続く第2弾では、東欧、ロシア、フランスのピアニストを中心に、さらに議論を深め、第3弾はアジアのピアニストも登場。
多くの示唆に富み、それぞれのピアニストの名言が詰まった読み応えのある3冊です。インタビューは、聞き手の力量が問われる世界。表面的な話に終わるか、心の深いところからの声が引き出せるのかは、インタビュア次第と言えるでしょう。ユアンプ氏の鋭い切り口に、一瞬ひるみながらも、真摯に応えるピアニストたちの言葉には、読む者の心が揺さぶられます。
特に驚くのは、第3弾で登場するアジアのピアニストたちのドラマティックな人生です。ベトナム戦争で防空壕の中で眠り、地下壕で練習。割り当て時間20分では足りずに紙鍵盤で指使いを練習したダン・タイ・ソン氏の壮絶な体験。
文化大革命で破壊される運命にあったピアノを救いたい一心で、3人の友人と一緒にピアノを担いで、天安門広場で京劇をピアノに編曲し演奏したイン・チェンツォン。
女優である妻とともに、北朝鮮に拉致されそうになったクン=ウー・パイクなど。
手に汗握る経験談が次々に登場。ドキュメンタリー映画を見るようなリアリティで迫ってきます。
訳者、森岡葉さんの自然な流れの読みやすい文体により、日本の私たちに、名対談が披露され、有難い限りです。
そこには、音楽に魅せられ、想像を絶する努力をし、死に物狂いで練習し、時には狂気すら含みながら、自ら音楽家として依って立つ自信をつかみ取ったピアニストたちの人生と音楽に対する想いが赤裸々に語られています。

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