兵庫県立西宮高校のピアノ物語

来月行うレクチャーコンサート&公開レッスンの打ち合わせ兼ピアノ選びのため、兵庫県立西宮高校にお伺いさせていただきました。蓮池や古木が美しいキャンパス!
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講堂では、吹奏楽部の生徒さんたちがコンクール直前の仕上げに余念がありません。
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問題のピアノ選びはスタインウェイ2台から。レッスンとコンサートをどちらの楽器で行うかを検討させていただきした。
1台は合唱室の1908年製ハンブルグ・スタインウェイ
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住友財閥の基礎を支えた廣瀬家から寄贈された楽器で、マホガニー、本黒檀はじめ、最高の材料が使われています。ピアノ黄金期の温かい響きが特徴でした。
もう一台は、合奏室にあるスタインウェイのフルコンサートピアノ。戦後まもなく制作された楽器ですが、ボディーはニューヨーク製、鍵盤アクションがハンブルク製という不思議なピアノです。
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スタインウェイの創業は1859年。当初ニューヨークのみの工場でしたが、80年後にヨーロッパでのニーズに応えてハンブルク工場を設立。協力して1台の楽器を作っていたそうですが、第二次世界大戦中、アメリカではナチスドイツの楽器としてスタインウェイは攻撃対象に。。。スタインウェイ社は、それを避けるため設計変更で音質を変え、ニューヨークだけで1台全部を作るようになりました。
高校の音楽科、長谷場純一先生のお話では、戦後、両国間で、昔のように1台を共同で作ることを模索した時期があったそうです。結局それは継続されることなく終わってしまったのですが、その短い期間中に造られた共同制作の希少な楽器で、日本には3台しかないとのこと。カナディアンメープルの強靭なボディーとハンマーはニューヨーク製。中の鍵盤アクションは繊細なハンブルク製。数曲弾かせていただきましたが、ピアニッシモを弾くとハンブルク、フォルテッシモを弾くとニューヨークを感じました。平和な時代の再来を象徴する響きとして西宮高校の音楽家の卵たちを育くんできた楽器です。
歴史ある高校でずっと愛奏されてきたピアノ2台。どちらにもそれぞれの味わいと持ち味と個性があり、けっきょく選ぶことが出来ませんでした。
9月5日は、前半後半でそれぞれの響きを楽しんでいただくことに・・・。楽器のロマンに思いを馳せていただき、一台一台異なる個性を持っていた古き良き時代のピアノの魅力についてもお話しさせていただきたいと思っています。

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