トリスタンとイゾルデ

東京二期会による《トリスタンとイゾルデ》を鑑賞。ライプツィヒ歌劇場との提携公演として東京文化会館で行われた舞台です。スペイン出身のヘスス・ロペス・コボス氏指揮、読売日本交響楽団。演出はケルン出身のヴィリー・デッカー氏。
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ダブルキャストで4回公演。11日の今日は、福井敬さん(トリスタン)、池田香織さん(イゾルデ)らの出演です。
20代の頃ワーグナーに痺れたきっかけはこの《トリスタンとイゾルデ》でした。ハーモニーが直接体の芯に訴えかけるようで、強烈な魅力を持ったこの曲にはまりました。演奏会でもこの曲の「前奏曲」をピアノで弾いたりしています。
今日も読響の厚みのある深い音色で序曲が始まるだけで鳥肌がたち、コボス氏の知性と情感あふれる指揮のもと、空間がワーグナー一色に染まるにつれ興奮!5時間に及ぶ大作なのですが、時間が短く感じました。
幕間には、11月の「ナクソス島のアリアドネ」でハレルキン役として出演する近藤圭さんらがトークショー。若々しく楽しい雰囲気でロビーのお客様たちも和んだ休憩時間となりました。研修生として学び、デビュー後若手ホープとして経験を積み、さらにベテランとして活躍、、、層の厚い二期会の組織力を感じた次第です。近藤さんとは12月にクリスマスコンサートで共演予定。将来が楽しみな青年です。
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本日の舞台。第1幕が海の青、第2幕が昼の世界を表す緑、第3幕が夜の世界の墨色。くっきりと印象づけられたステージでした。
舞台に置かれたボートは、イゾルデを運ぶ船になり、官能的なベットにもなり、死の床にもなりました。デッカー氏の演出は、二人が永遠に結ばれない宿命として描かれます。しかも驚くのは、トリスタンとイゾルデは自ら目に刃を当て、二人は互いの姿すら見えない・・・という最期なのです。「春琴抄」を彷彿とさせる場面となりました。
イゾルデの池田さんは、最初の一声から最後のアリアまで疲れを知らない強靭な歌唱で圧倒。誇り高く情熱と愛に生きたイゾルデを見事に体現しておられました。歌いきるだけでも大変なワーグナーのオペラ。昨日のトリスタン役のレジスターさんは途中降板が決定したそうです。
日本人としては、初演となる今回の演目。運命に翻弄されるトリスタンの悲劇を福井敬さんは気品あふれる声で繊細に演じられました。日本に数少ない貴重なヘルデン・テノールとして、益々の活躍を願っているところです。福井さんとは10月に穂高で共演予定。「僕、穂高は初めて!」と楽しみにしてくださっています。
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