サントリーホールで開催されましたバルト三国建国100周年記念演奏会にお招きいただき、ギドン・クレーメルさんの演奏を堪能しました。
ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第11番「セリオーソ」(マーラー編曲版)に始まり、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番(独奏:クレーメル氏)、ピアノ協奏曲第12番(独奏:リュカ・ドゥバルグ氏)、「セレナータ・ノットゥルナ」というプログラム。
クレメラータ・バルティカは、1997年、クレーメル氏50歳記念に結成された室内合奏団です。
指揮者なしで演奏されたベートーヴェンでは、きめ細かで生き生きとしたアンサンブルを披露してくれました。
各スラ―のディミニュエンドが徹底されていて、フレーズ最後の音は宙に溶けるようで軽やかなモーツァルト。そのクレメラータの波に乗って、クレーメル氏の1641年製「ニコラ・アマティ」から柔らかくまろやかな美音が紡ぎだされます。
若き日のクレーメル氏の演奏は、驚異的なテクニックと鋭くシャープな切り口が魅力でした。精力的で、ときには持っているエネルギー量が楽器を超えてしまうような音さえあったように記憶していますが、円熟の境地に入ったクレーメル氏からは、肩の力がすっと抜け、「歌心」そのものが残ったような・・・そんな印象を受けました。
アンコールで演奏された「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」は、様々な曲が挿入された編曲エンターテイメント。サントリーホール満員の聴衆を沸かせました。
心に響いたのは、静かなクレーメル氏のアンコール。余計なものをそぎ落とした素朴な旋律から、心のつぶやきが直接染み入るようでした。
ラトヴィアは、人口の数だけ民謡があると言われる「民謡の宝庫」です。ラトヴィアのリガ生まれのクレーメル氏も多くの民謡を心に刻みながら時を過ごしてこられたことでしょう。今年は、5年に1度のラトヴィア合唱祭(歌の祭典)と建国100年が重なる特別な年。7月の合唱祭は、大変な盛り上がりになることでしょう。
ブルーローズで行われた終演後のパーティでは、ダツェ・トレイヤー・マスィ駐日ラトヴィア大使にご挨拶し、エストニア出身の指揮者、パーヴォ・ヤルヴィ氏にお会いしました。マエストロは、眼光鋭い方ですが、バリトンの深く豊かな優しいお声です。
クレーメル氏も建国100年に寄せてお祝いのスピーチ。
ラトヴィアの地酒「バルサム」などが並びます。
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