国立音大のオーディション審査を終え、所沢ミューズ アークホールへ。
マリンスキー歌劇場管弦楽団 2014年日本公演 最終日の演奏会を聴きました。
前半は、プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」から”仮面””少女ジュリエット””モンタギュー家とキャピレット家”。
目の前でオペラが繰り広げられているように、あるいはそれ以上のリアリティでドラマが迫ってきます。
続いてロシア期待の新星、ダニール・トリフォノフのソロでチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。決して大柄とは言えない細身のトリフォノフが、無理のないピアニズムで冴えた演奏を披露。ピアニッシモを巧みに使いながら、曲のクライマックスに向けて安定したテクニックでロシアン・ピアニズムの伝統を示しました。
後半の「悲愴」はゲルギエフの真骨頂。とにかく最初の音から胸をえぐられるようで涙が止まりません。心の深い所に入ってくるような、あるいは、心の奥を抉り出ししたような時間が流れます。オーケストラとか音楽とか響きとかでなく、「心」そのものを聴いているような錯覚に囚われ、人間の持つ深い哀しみが空間を支配している感じです。
聴衆は、引き込まれ、身動きすらできなくなり、絶望と希望の狭間で息が詰まるような圧倒的な緊張感があたりを覆い尽くしました。
この曲は、全楽章が終わるまでに途中で拍手が起こったり、逆に曲を知っている人によって最後の音が終わるやいなや「待ってました」とばかり拍手が起きることも多いのですが、今日の所沢では、全員が黙祷を捧げるがごとく、音楽が終わっても凍りついたような静寂が続き、感動の波動が地面の下から沸き起こるまでに時間がかかりました。いかに聴衆が深く心を突き動かされたかが証明されるような瞬間でした。
あらゆるオーケストラによって演奏されつくしてきた「悲愴」なのに、まるで初めて聴くような感動!何年に一度かの名演に立ち会えたことの幸福を感じた所沢での午後でした。終演後、夕闇の中を充実した気分で帰路に着きました。
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