「紀尾井シンフォニエッタ東京」第72回定期演奏会

紀尾井ホールでのコンサート。今日は、オール・ベートーヴェン・プログラム。
「プロメテウスの創造物」序曲に始まり、ヴァイオリン協奏曲と「運命」という、王道を行くプログラム。
そして演奏もガップリとベートーヴェンに向き合う王道を行くものでした。
「伝説の巨匠」とパンフレットにあるアントン・ナヌート氏の指揮は、妥協のない姿勢と確固たる意思が感じ取れる堂々たるもので、ベートーヴェンの音楽の神髄に触れる思いがしました。

スロヴェニア生まれの77歳。
ステージへの登場も矍鑠としておられ、音楽人生のありようが垣間見えます。
紀尾井シンフォニエッタの練習は、普通のプロオケより多く、メンバーの方のお話では、今週末の本番のために月曜日から合わせに入っていたそうです。そしてナヌートさんは、大変いい方だそうですが、とにかく厳しい要求が次々に繰り出され、繰り返し練習したあげくに、また「はい!ダカーポ!」だったそうです。

オーケストラのメンバーから嫌われないために、あまり繰り返さず、時間をかけず、器用にさっと仕上げてしまうやり方とは、180度違います。
真摯に音楽に向き合う、その意気込みが、客席にも明らかに伝わり、聴衆からも熱狂的な拍手が送られました。

そしてイタリア、パドヴァ生まれの女流ヴァイオリニスト、アナ・チュマチェンコの素晴らしい独奏も客席の感動を呼びました。
伸び伸びしていて、自然で、かつエネルギッシュ。
音は美しいのですが、決してきれい事で終わらない構築力もあり、見事なベートーヴェンでした。
一瞬ピーターパンがステージに現れたのかと思うようなボーイッシュな緑の衣装、リラックスした表情。メニューインアカデミーやミュンヘン音楽大学での教育活動もしておられるとか。
知、情、意、そして運動能力、これらがバランス良く、聴いていてゆったりとした気分にさせる、心地良い演奏でした。

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