「思い出のベンジャミン・ブリテン」

明治学院大学アートホールにおいて行われましたレクチャーコンサートでテノールのジョン・エルヴィス氏と共演させていただきました。イギリスを代表する現代作曲家ベンジャミン・ブリテン、そしてブリテンが大きな影響を受けたヘンリー・パーセルの作品など16曲あまり。題して「思い出のベンジャミン・ブリテン」。
エルヴィス氏がボーイ・ソプラノ時代、ブリテンから献呈された「聖体のキャロル」が紹介されたり、ブリテンとのレコーディングやコンサートの思い出が演奏の合間に語られました。
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2回の合わせは、実に綿密。「こう歌いたい」というそれぞれの歌へのイメージが明確にあり、共感を持って伴奏させていただきました。英語の響きと密接に結びついたリズム、言葉と一体化したハーモニー、感情の揺れを表す旋律ライン。素朴な民謡から戦争反対のメッセージまで、ブリテンの音楽と人生を伝える充実した内容となりました。
これまでほとんど弾いたことがなかったブリテンに、一歩も二歩も近づくことができ、嬉しい限り。本来ならばエルヴィス先生とお呼びしなくてはならない偉大な歌手なのですが、威張った権威主義的な面がなく、気さくでお茶目な人柄。日本の音楽仲間からも「ジョン!」と呼ばれ親しまれています。
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「古楽器を専門とする奏者や歌手がバッハ以前の音楽しかやらないのは、実にもったいないことだ!」と力説され、バロックからロマン派、そして現代までの広いレパートリーを歌っておられます。その経験を通じて音楽家としてのキャパシティーを広げ、作品の解釈を深めてこられたのでしょう。
今回の来日でも、チェンバロでバッハやモンテヴェルディを歌い、フォルテピアノでシューベルトを歌い、現代ピアノでブリテンを歌い・・・という具合で、過密スケジュールが続きました。それでも全く疲れを見せないエネルギーは、音楽をする喜びから生まれ、演奏への情熱が若さの秘訣なのかもしれません。
出番直前まで、冗談を言い、よくしゃべり、よく笑い、そのままのノリでステージに出てしまうジョン。もうちょっと静かに黙っていたほうが喉のためなのでは・・・と伴奏者としては思ってしまったのですが、自然でおおらかな姿勢は、おそらくボーイ・ソプラノ時代から変わっていないのかもしれません。
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ブリテンにどっぷり浸った二時間。終演後は、レクチャー・コンサートの成功で笑顔がはじけます。渡邉順生先生、司会の樋口隆一先生、通訳の加藤拓巳さん、譜めくりしてくださった佐野千春さんらと一緒に記念撮影。
お世話になりました明治学院大学の皆様に御礼申し上げます。

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