松風

浅草に「松風」ありと夙に名高い名店です。

店内にはいると、大きな樽が目に入ります。木がふんだんに使われた落ち着いた雰囲気。ほぼ正方形の店内は広くも狭くはない心地よい空間です。ミュージックはかかっていません。人々のざわめきの中を、「田酒～、1本、○○番さ～ん。」と、店員さんのよく通る声が響きます。松風節ともいうべき、その独特の抑揚と長く母音を伸ばす声が響き、華やかで落ち着いたざわめきの中を、私たちはひととき至福の時間を過ごすことができます。

お酒の種類は決して多くはありません。菊姫、浦霞、田酒、賀茂鶴、菊正宗、 真澄･･･といったところでしょうか。

酒の肴もたくさんはありませんし、そんなに凝ったものも置いていません。でも、お猪口つきで出てくるおでんの味は上品で味わい深いものでした。

店員さんはお客によく注意を払っているようです。チェーン店でよくあるように、手を挙げ大声で何度叫んでもなかなか来てくれないと言うことはありません。さりげなく顔を上げると店員さんと視線が合い、すぐに追加の注文をとりにきてくれます。

メニューの多さや山海の珍味で勝負するのではない、このようなお店こそ、本当の意味の名店というのでしょう。