リヒテンシュタイン侯「華麗なる侯爵家の秘宝」

スイスとオーストリアの国境あたりにある小国、リヒテンシュタイン。
その侯爵家が所蔵する膨大な美術コレクションの中から139点が来日しました。国立新美術館の、題して「華麗なる侯爵家の秘宝」。
長い間、かつての拠点ウィーンにコレクションがあったそうですが、第2次大戦後、居城ファドゥーツ城に移され、その後は、公開されていなかったまさに「秘宝」です。2004年に、侯爵家の別荘であるウィーンの「夏の離宮」で公開されるようになったのだそうです。

中世ゴシック、ルネッサンス、バロック、そして19世紀の作品まで、広く集められた世界でも有数のコレクション。
「美術品を集め続けよ」という家訓は守られ続け、入りきれないほどの美術品がありながら、さらに現在でも新たに収集が続けられているそうです。

ルーベンスの「デキウス・ムス」が圧巻。同じくそのルーベンスが娘を描いた「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」はまるで生きてこちらを向いているかのようでした。このお嬢さん、早くにこの世を去ったそうです。永遠に残る絵として残した父ルーベンス。娘への愛が画面いっぱいからあふれているようでした。

バロック・サロンの天井画、アントニオ・ベルッチの絵画。それぞれ占星術、彫刻、絵画、音楽の寓意です。ちょうど見上げた角度から描かれていて、絵画の寓意は、画家が胸をはだけた女性に絵を手ほどきしているのを下から覗き込むような具合になっています。音楽の寓意は、クラヴィコードを弾いている演奏家を下から見る感じ。
ラウフミラーの象牙で出来た豪華なジョッキや貴石象嵌のチェストなど、ため息が出るような美しさ。完璧な美を求め続けた当時の王家の想いがコレクションから伝わります。

私は、大好きなヤン・ブリューゲルにゆっくり出会えて、絵をしげしげと見ることができ、ご機嫌の一日でした。
国立新美術館に行くときにたいてい寄るのが、モンサンミッシェル出身のシェフのフレンチ。ウェスト本店の隣にあります。今日は、一年に1回入荷するムール貝が入っていてラッキーでした。小ぶりで繊細。白ワインとガーリックの味わいがプリプリのムール貝の味を引き立てます。

先日、友人に電話をしたら「ただいま電話に出れません」のメッセージが流れ、「ごめん、今リヒテンシュタインの侯爵とお食事中なの」というメール。翌日彼が言うには、何と、晩餐会などが続いておられた来日中のリヒテンシュタイン侯爵様が
「日本の気取らない焼き鳥屋みたいなところにぜひ行ってみたい」
とおっしゃるので、ちょうど、そこをご案内していた真っ最中だったそう。
膨大なコレクションの持ち主には意外な一面も・・・。

12月23日まで公開です。
ぜひご一覧を!

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