シャルダン展 ~静寂の巨匠~

日本で初めてのシャルダンの個展です。
明日までの会期。ギリギリセーフで鑑賞がかないました。

ジャン・シメオン・シャルダン(1699~1779)は、「18世紀のフェルメール」とも讃えられ、静謐な画風と光と影の表現、独特の優しい感性で、ルイ15世や女帝エカテリーナ2世にも認められた画家です。

「木苺の籠」など、その静謐な美しさは、ため息がでるほどです。
籠に盛られた赤い木苺を中心に、左にコップに入った水、右に桃とさくらんぼ、前に白いカーネーションという具合に、構図が考え抜かれ、美しいバランスと色彩の対比で、見る者を魅了します。
何点か見ていて気づいたのは、シャルダン独自のスタイルです。
水は、すべて画面左に描かれています。
また、厚いテーブルの手前に、カーネーションの茎とかナイフの柄などが置かれ、飛び出して見える構図になっています。それが不思議なリズム感を与えています。

「食前の祈り」では、スカートをはいた小さな男の子(当時の習慣だそうです)を優しく見つめる母の温かい眼差しが印象的です。
「良き教育」では、聖書を教える母と娘の温かな気持ちの交流。少女の白い肌やコップに入った水など、まさに目の前に存在し、触れることができるかのような見事な筆づかいです。
近づいてみると形には見えず、全部が交じって見えるのですが、遠くに離れて見ると、「形」になって浮かびあがってくるのです。
独特の形式美の世界に引き込まれているうちに、いつの間にか色彩の魔法にかけられたような気分になったシャルダン展でした。

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