6名器とともに

歴史的ピアノ4台、現代ピアノ2台、計6台使ってのコンサートをセレアモコンサートホールで行いました。
画像1
18世紀のウィンナーアクションであるシュタインとワルターのモデル。19世紀のイギリス式アクションを使ったプレイエルとエラール。そして現代を代表する名器であるスタインウェイとベーゼンドルファー。
「音色を聴き比べるなんて、自分にはできないだろうと思っていたら、全然違うので、すごく楽しかった!」とお客様におっしゃっていただけると私も嬉しくなります。
ピアノは、温度湿度を同じ状態に管理していてもその日その日で機嫌も音も微妙に違います。息をしているのではないか?と思うくらい「生きている」のがピアノです。
そういう意味で、6台のピアノというより、6人の老若男女。
彼らとコラボしながら、自分自身も時間を旅し、それぞれのピアノの個性と向き合い、語り合うひとときとなりました。
今回、6台のうち、一番長い時間弾いたのがプレイエルでした。6月のサントリーホール、秋のフィリアホール、、、と今年もこの楽器とのおつきあいが深まりそうです。不思議なのは、プレイエルは弾けば弾くほどピアニッシモの音量が小さくなっていくことです。
数日前、プレイエルのダンパーのきしみが気になり、調律師さんにいらしていただきました。
快く、直ちに往診してくださるお医者様あっての歴史的ピアノです。アクシデントや調整の難しさや心配の種が、かつては一つ一つ気になったものでしたが、最近は、そういう危さや不確定要素も歴史的楽器の魅力のうちと思えるようになってきました。それは、技術的に根本のところで支えてくださっている調律師さんたちのおかげです。
今日は、リハーサルのとき、音の残り方が1音心配な箇所があったのですが、無事本番を終えることができました。現代のスタインウェイの切れ味のよいダンパーの場合、どこか一つでも微かに音が残っていると、とてつもなく気になりますが、プレイエルの場合、もともとオーバーダンパーと言う、音の余韻が残るタイプのダンパーですので、弾いている本人ほどお客様は気になりません。
今、「モーツァルトとヴァルター・ピアノ」に続く「ショパンとプレイエル・ピアノ」を執筆中です。弾き手としての実感をこめて筆を進めたいと思っています。

コメント