ヴァルター到着

朝、8時半。昨日までの快晴から一変。雨と風の諏訪を出発。
午後から、東京でモーツァルトのレコーディングの準備に入りました。

今回は、Anton Walter(1784年ウィーン)のレプリカを使って録音させていただくことになりました。
ウィーン時代のモーツァルトの息吹が伝わる音色です。

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昨日までの数日間は、「いかにダイナミックに音を飛ばすか」にかかっていましたが、今日は、「いかに繊細な息づかいを表現するか」というまるで対極のコンセプト。
普段は88ある鍵盤を弾いている現代のピアノ弾きにとって、鍵盤数61というのは、「狭い」と感じる音域ですが、モーツァルトもハイドンもぴったりおさまります。一番下のFの音を何度も鳴らしながら、モーツァルトやハイドンが楽器の限界ギリギリまで使っていたその心意気を感じたりします。

足ペダルでなく、膝を上げてのペダル操作です。慣れてくるとダンパーを上げるという動作と膝を上げるという動作が同じ方向なので、かえって足で降ろすペダルより自然な感じがしてきます。

この楽器、2006年のモーツァルト生誕250年記念年に、愛知県立芸術劇場で演奏させていただいて以来、2年ぶりの再会でした。
あの大ホールの3階にまで美しく届く実感を感じた経験のおかげで、私のピアノフォルテのイメージが大きく変わりました。
コピーの楽器でなく、オリジナルやレプリカの持つ豊かな響きと力。
今回も名器から多くを学びながら、さらに楽器と一体になった演奏を目指したいと思っています。

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