3月中旬以降、コンサートや催しの多くが中止、延期となり、今日は久しぶりの演奏会。栃木県にあります西方音楽館でのリサイタルでした。
前の晩は、近くのビジネスホテルに宿泊。朝の散歩途中、美しい秋空に「智音寺」の文字が目が入り、吸い寄せられるように、静かな境内へ。
この鐘はどんな音がするのでしょう。。。
近くには立派な瓦屋根のお宅が並びます。老舗の湯葉屋さんやお煎餅屋さんなど、レトロな街並みを楽しみながら少し歩きました。
朝10時、西方音楽館に到着。お庭は、満開の銀木犀が甘やかな香りを放ち、柘榴が大きな実をつけています。演奏予定の1曲、チャイコフスキーの「秋の歌」の旋律を心に描きながら、門をくぐりました。
この10月から感染対策の上、再開となった音楽会。生の波動と音楽を共有する喜びをあらためて感じました。マスクを通して表情を見せてくださるお客様、半分の客席数から生まれる濃密な空間。奏者にとり、この上ない幸福な時間をいただきました。
コンサート後は、ベートーヴェンの「月光」ソナタの公開レッスン。ペダリングによる神秘性の表現、デュナーミクの幅広さ、弱音の効果など、演奏を交えお話しさせていただきました。熱演を披露してくださったAさん、長時間、熱心に耳を傾けてくださったお客様に感謝です。
毎年、スタッフとしてお世話くださっている優しいK子さんが、コンサート前と休憩時間に窓を全開し、換気してくださったのですが、終演後再び窓を開けながら一言。「あ!このカマキリ、コンサートの間中、ずっと同じ場所にいた。きっとベートーヴェンの波動が心地良かったからに違いない!」と大笑い。
昆虫に詳しい館長、中新井紀子さん曰く、カマキリの命は短いそうです。雄は雌に食べられてしまうし、雌は卵を産んだらすぐに命が終わるとのこと。その短い一生の中で、特等席でベートーヴェンを聴いてくれたカマキリに妙に親しみがわき、手を振って別れました。
コメント
西方音楽館でコンサートを聴かせていただいた一人です。
久しぶりの生演奏で、すべてが感動、感激でした。
中でもワルトシュタインは見事でした。
そして、圧巻だったのは、強弱の変化の伴う長いトリルです。
拙いながらピアノを弾く者として、耳と「目」で堪能させていただきました。
そして、アンコールの1曲の秋の歌。
情緒豊かなしっとりとした演奏に、思わず涙が出そうになりました。
どうかお体にお気をつけご活躍くささい。
まりこ様
ご丁寧なコメントをありがとうございます。ご来場感謝申し上げます。ワルトシュタインのトリルは、学生の頃、ドイツのクラウス・シルデ先生やウィーンのイエルク・デームス先生からイメージ、奏法などいろいろ教えていただきました。シルデ先生からPPのトリルは爪で弾くといい、、、と教えていただき、タッチの角度を変化させながらデュナーミクを変える奏法を使っています。デームス先生からは詩的なイメージを学びましたが、この自粛期間中執筆した「作曲家が愛した楽器からアプローチする演奏法~ベートーヴェン~」(学研プラス)に、デムス先生直伝の指使いを入れました。お時間ありましたら、ご笑覧くださいませ。少し肌寒くなってきました。お身体お気をつけてお過ごしください。