フォルテピアノ・リタイタル@西方音楽館

今日は栃木県にあります西方音楽館でのリサイタル。ホール常設のフォルテピアノ(ヴァルター1795年モデル、C.クラーク1994年製作)の銘器での演奏会でした。
酷暑真っただ中にご来場くださいました皆様に感謝申し上げます。

かれこれ8年ほど前に弾かせていただいて以来の再会となるフォルテピアノ。かつてフォルテピアノの第一人者、故小島美子さんが愛用されていた楽器です。
40代の若さで亡くなられた小島さん。私は小島さんと全く面識が無いのですが、楽器には小島さんの魂が宿っているように思えてなりませんでした。

名匠クリストファー・クラークの元から日本に届いたばかりの頃、松本で共演なさったフラウトトラベルソの塩嶋達美さんが当時の録音や小島さんのCDを聞かせてくださいました。クレヨンしんちゃんの真似が上手だったというキュートな小島さんは小柄な女性だったそうです。CDのジャケットには小島さんの率直なエッセーが掲載されています。手が小さいためベートーヴェンを好きになれなかった小島さんが、この楽器に出会い初期のベートーヴェンにぴったりだと思いベートーヴェンを録音されることになった経緯が書かれていました。

今回の演奏会について、中新井館長さんがFBで「弱音の崇高な美しさ、飲み込まれそうに渦巻く音の魂、エネルギーの炸裂、リズムのきれの良さ、そして何よりも音楽は、あの瞬間に生成する”生き物”でした。」と仰ってくださいました。まさに演奏会は「生もの」。お客様との出会い、楽器との出会い、ホールの音響やその日の空気で全てが変わります。始まるまで予測できないこと、始まって初めてわかること・・・。毎回、音楽という変幻自在の風に向かって飛び込む感じです。

西方音楽館という密な空間に古の響きが広がり、お客様と共有させていただいたベートーヴェンの世界。

いつもお聞きくださる親しいお客様、数十年ぶりの再会となったお客様、初めてお目にかかった愛好家の皆様が繊細な響きに心の耳を傾けてくださいました。ありがとうございました。

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