今年は、新ウィーン楽派を牽引した作曲家シェーンベルク(1874-1951)の生誕150年にあたります。
これまでシェーンベルクのピアノ小品やウェーベルンの「変奏曲op.27」、ベルクの「ピアノ・ソナタ」などを弾いてきましたが、先日、私がコーディネータを務める「ピアノ・リテラチュア」の授業でのゲスト講師、川島素晴先生の授業「新ウィーン楽派」の回では、作曲家の立場からの切り口がとても興味深かったです。
調性音楽から無調へ、そして十二音技法の確立。
ある響きを聴いて「調」を感じるか、という問いをクラスの音大生にすると半分半分の結果になったり、この音をこう変えれば「調性音楽」になる、という演奏付き解説に、なるほど、と頷いたり。
音とは?調とは?演奏とは? そもそも音楽とは? という毎日音楽にどっぷり浸かっていると、あらためて考えたことも無い問いが次々に浮かんだ次第です。
無調に入ったシェーンベルクの音楽は無機質と思われがちですが、1911年製のウィーン製ベーゼンドルファーで演奏するとなぜか「温かい音楽」になるのが不思議です。マーラーの死を悼んで書いたop.19-6の静かな祈りと神秘の響きは格別。
先週10月22日は、その川島先生の指揮により『月に憑かれたピエロop.21』が東京文化会館 小ホールで演奏されました。歌は長島剛子先生。梅本実先生(ピアノ)とのリート・デュオ・リサイタルシリーズの一環です。高橋聖純(フルート&ピッコロ)、菊池秀夫(クラリネット&バスクラリネット)、漆原啓子(ヴァイオリン&ヴィオラ)、藤森亮一(チェロ)という名手揃いの音楽家と共に、完全に内面化した歌唱は見事でした。シュプレッヒシュティンメ(Sprechstimme)という特殊な歌唱法(語りと歌の中間のような独特の歌い方)、一度として同じパターンがでてこないアンサンブルと相まって、長さを感じさせない凝縮された集中度の高いパフォーマンスに心からの拍手!でした。
宗教を冒涜するようなスキャンダラスな内容に、初演の時にはブーイングと喝采が半々だったとか。112年後の完全受容をシェーンベルク自身は想像していたでしょうか。
帰宅し、シェーンベルクの画集をあらためて捲ってみました。そういえばしばらくウィーンに行っていない。。。と思いつつ。
今回の演奏会、前半はシェーンベルクがベルリンに居を移す前、20代にウィーンで作曲した初期の歌曲やキャバレーソングが演奏されました。美しい後期ロマン派のシェーンベルクは、新鮮そのもの。独学で独自の音楽を確立したシェーンベルクの人生に想いを馳せた2時間でした。
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