「夢塾」と書いてムジーク。
オーナーの笠原さんのネーミングの素晴らしさです。
楽屋には、笠原さんの水彩画や水墨画が飾られています。
今日は、トロイメライ(夢)やアラベスクなどシューマンの小品、
そしてメンデルスゾーン、ショパン、リスト・・・と
ロマン派の作品を並べました。
20人から30人、というサロンは、お互いの顔も息遣いも見える中での演奏です。
ピアノは、チャレンというイギリスのピアノ。
この数年でぐっと音が良く響くようになってきていました。
ところが、夏の暑さのせいで、膠が溶けたのか、演奏途中、鍵盤の象牙がひとつはずれ、パーンと上に飛びました。「革命のエチュード」の蜷局を巻くようなパッサージュの最中でした。
演奏を止めずに、右手でそのはずれた鍵盤をつかんでピアノの上に置き、何事もなかったように弾き続けたので、どなたも気付かなかったのですが、打ち上げでは、その話で盛り上がりました。
「運動神経がいい」
「きっと飛んでる蚊や蠅もつかめるに違いない」
などなど。
そういえばドイツの巨匠がレッスン中、ピアノに飛んできた蠅をつかみ窓から外に逃がしてやったときは、驚きました。
「蠅がつかめるくらいの能力がないとピアノは弾けんのじゃよ」
と巨匠は涼しい顔でしたが、さすがに、私はそこまではできません。
いろいろハプニングもつきものの本番ですが、
心に届いているというたしかな実感とともに演奏するときは、音にもそれが現れ、目には見えないけれど、強い絆でお客様と結ばれるような感覚になります。
夢塾も10年になりました。
「久元祐子さんは進歩し、深みを増している。それを我がサロンでこうして毎回聞くことができるのは嬉しい」
とオーナーの笠原さんのお言葉。
ありがたいことです。
コメント
鍵盤の象牙が外れても
革命を弾き続けられるのですか!
河島英五のコンサートを
前のほうの座席で聴いていたとき
ギターを猛烈にかき鳴らしながら
歌っていたその瞬間、
弦が切れたのです。
それでもなお、弾き、歌う彼に
聴衆が一層感動したこと、
涙が止まらなかったコンサートは
初めてでした。
久元さんの夢塾を読みながら
思い出しました。