みなとみらいリハーサル

誕生日の今日、爽やかな秋晴れに気を良くして軽い練習のあと横浜へ。

みなとみらいのエレベーターが上がったところでドアが開くと、野平一郎さんのお姿が。軽井沢での楽しく忙しい5ステージ・コンサートの日のことが蘇りました。「8月はどうも・・・。」とすれ違い、ステージへ。

野平さんのリハーサルが少し早めに終わったようで、すでにシュトライヒャーとプレイエルはステージに設置済み。ベーゼンドルファは、調律師さんの到着待ちということで舞台袖で待機。リハーサルは、2台の名器から開始しました。

今回弾かせていただくプレイエルは1848年製。
私が持っている1843年製プレイエルとも、この間沼津で弾かせていただいた1840年製とも違うタッチで、プレートもアイボリーではなくて黒くシンプルなもの。全体に華奢で繊細な持ち味が特徴の楽器です。柔らかなタッチで、遠くまで響く音色を持ちバランスが良い感じです。

ホールの音響チェックも兼ねて、第2響板なしでの演奏、というのも試しましたが、調律の江森さんもスタッフも「やっぱりつけてたほうがいい!音が上品」と意見が一致。私自身もいつも第2響板をつけて弾いているので、そのほうが自然な感じです。

プレイエルが持つ気品のある香りと音色は、やはり第2響板あってこそ、という思いを強く持ちました。はずすとパーンと直接音が飛ぶのですが、くぐもったような気品ある声は、第2響板をつけていたほうが出やすいのです。

渡邊先生所蔵のナネッテ・シュトライヒャーは、池袋芸術劇場の展示室で少し触らせていただいて以来の再開です。
そのときは、たしかハイドンのソナタやベートーヴェンの悲愴の2楽章などを弾かせていただいたのですが、今回は、メンデルスゾーンとシューマン、ロマンティックな柔らかな響きを求めながら弾きました。

4本のペダルの一番左がソフトペダルで鍵盤とハンマーが右に移動します。足の感覚だけでなく、目で見て真ん中のプレートからの位置で半ペダルの調整をする、という方法を渡邊順生先生がアドバイスくださり、なるほど!微妙な調整を安心して行うことができました。
池末さんの技術で、きめこまかく調整、調律が行われ、オリジナルの状態が最も保たれ、楽器の良さが最も引き出されている、と感じることができる銘器中の銘器でした。

先生の愛器を弾かせていただくのは、本当に光栄なことですが、
「自分の楽器の音を客席で聞くことってないから、楽しいね。僕の楽器、いい音だねぇ!」
と言ってくださり、ほっとしました。
歴史的楽器の音というのはホール如何で決まるところもありますが、
講師の西原稔先生が「いろんなホールでこのシュトライヒャーを聞いたけれど、同じ楽器でも今日が一番いい音で聞こえる。みなとみらいはすごくいいホールだ。」とのこと。

そうこうするうちに、ベーゼンドルファーがスタンバイ完了。
3台のレースカーがピットに入ってくる瞬間のような緊張感で、スタッフの方々が、きびきびと設置してくださいます。

ベーゼンドルファーは、先日、工房に稽古に行ったとき、まったく鳴らなくてショックだった音も、今日は、スプリング取り替え作業をしてくださったとのことでずいぶんと鳴るようになり、あとは、数個の鳴らない音を鳴らす作業をしていただくことになります。
タッチの重さとのバランスで、重いのをとるか、音が出るのをとるか、という究極のせめぎあいだそうで、あと1日、調整を続けていただくことになりました。

楽しい朝岡さん、次から次にピアノの話が泉のように湧いてくる西原先生と3人で、お話の打ち合わせ。
歴史的名器10台に囲まれてあっという間に過ぎたバースディでした。

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