ナンネルに扮して

このところ、モーツァルトのお姉さんのナンネルに縁がある私です。
昨年は、ナンネルを主人公にした映画のプログラムでエッセーを書かせていただきました。
今年は、イタリアのロヴェレート音楽祭で弾かせていただくことになっていますが、ナンネルの伝記を書かれた女性作家にお目にかかる予定です。

120405
今日は、国立音大講堂大ホールで「ナンネル」役で出演。
久保田慶一先生の「モーツァルトの青春」のお話の中で、
鬘をかぶってナンネルに扮し、「弟」の曲を弾かせていただきました。

「みなさん。入学おめでとうございます。モーツァルトの姉、ナンネルです」
と挨拶したところ、会場爆笑。
鬘をとってキャンパスに戻っても
「ナンネルお姉さま~!」
と声がかかります。

子供の頃、属敬成先生の「形式学」の講義を受けに、成城学園ご自宅に通っていたことがあります。瀟洒な洋館でした。その頃お世話になったお兄さん、お姉さんが、国立音大の先生になって活躍されており、再会できたことはうれしいことでした。
属先生は、毎年みんなにクリスマスプレゼントをくださるのですが、そのとき私にあたったのが、「ナンネルの楽譜帳」でした。
今日は、その楽譜を持ってステージに立ちました。

女性が人前でヴァイオリンを弾くことも、作曲家になることも許されていなかった時代。
ナンネルももう少しあとの時代に生まれていれば、レオポルトの完璧な音楽教育を受け、時代の寵児になっていたかもしれません。
今日弾かせていただいたベーゼンドルファーは、1828年、ウィーンで創業したメーカーです。このときナンネルは77歳、シューベルトはこの年に亡くなっています。
翌1829年、ナンネルは78歳の、当時としては長い生涯を閉じました。弟モーツァルトが35歳の若さで世を去ってから、40年近い歳月が経っていました。ナンネルは、ベートーヴェンやシューベルトを見送り、モーツァルトが知ることのなかった新しい時代のピアノを見たことになります。

今年の9月11日、東京文化会館で1829年製のベーゼンドルファーの音をお披露目させていただきます。
この時代の香りと音を再現できたらと思っています。

コメント