「詩的な音楽の未来のために」

「若きダーヴィト同盟」主催、「第2回 ロマン派音楽 レクチャー・コンサート」が、五反田文化センターで開催されました。
藤本一子先生のお優しい語り口でのレクチャーで、シューマン、シュンケ、メンデルスゾーンの作品について、興味深いお話をお聴きすることが出来ました。
演奏は、前半、和田紘平さんがシューマンの大作、幻想曲  ハ長調 を、奈良希愛さんがシュンケのグランド・ソナタの第1楽章を演奏されました。
シューマンは、当初、幻想曲の各楽章に、それぞれ、「廃墟」、「トロフィー」、「棕櫚」とタイトルをつけていたそうですが、後に消され、「幻想曲」としました。壮大な構想とベートーヴェンへの崇敬の想い、そして、自伝的な表白とが相まって、この名曲が生まれていったということが、演奏とともにあらためて感じられました。

シュンケについては、ほとんど知らなかったのですが、シューマンが早逝の作曲家シュンケをいかに高く評価していたかが、シューマンの手紙の言葉とともに紹介されました。
「僕は友人全部を彼と取り換えても惜しくはありません」(母宛ての手紙 1834年3月19日) 

死の床にあったシュンケのスケッチ画がステージに大映しになりましたが、少しショパンを思わせるような雰囲気です。
「夢見るような瞳、鷲のような鼻、繊細でアイロニーに満ちた口、豊かに垂れた縮れ毛」
と、シューマンは評しています。
シューマンのトッカータは、ホロヴィッツが毎日、指ならしに使っていたことでも知られる曲で、私も若いころ、よく弾いていましたが、このトッカータは、シュンケに献呈されています。
壁を隔てたお隣同志に住んでいたというシューマンとシュンケ。
シューマンは、ずっとこのスケッチ画をピアノの部屋に掛けていたそうです。

後半は、二人の若き弦の名手、山本美樹子さんとチェロの森山涼介さんが加わり、メンデルスゾーンのピアノ・トリオ。
藤本先生は、お話の中で
「シューマンは、セクションごとのつなぎに大変時間をかけて部分と部分をつなぎました。けれどメンデルスゾーンは、はじめから自然で流れるように音楽ができあがっていました」
とおっしゃっていましたが、まさに、その言葉が音で体現された演奏でした。
様々な表情が、自然に流れていく名演でした。

早朝から引っ越し荷物との格闘で、会場に着いたときは、疲労困憊だったのですが、9時過ぎの終演で会場を出るときは、すっかり元気回復。エネルギーが体を充満したような気持ちで、帰途に着きました。
ロマン派の音楽が強力ビタミン剤のように体に働きかけてくれたレクチャーコンサートでした。

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