「ルーベンス展~栄光のアントワープ工房と原点のイタリア~」

偉大なモーツァルトの作品と向き合った90分を終え、友人と渋谷の Bunkamura へ。
ザ・ミュージアム で開催中の「ルーベンス展~栄光のアントワープ工房と原点のイタリア~」を鑑賞しました。
聖女や戦いの場面、狩りの様子、神話の世界、聖書から取られたシーンなど、考え抜かれた構図と重厚な色合いの深さに圧倒されます。

ルーベンスは、ひとりで制作するのみならず、工房を持っていたことで知られます。もちろん制作の最終段階ではルーベンスが手を入れていた、ということですが、工房の職人たちの手によりシステマティックに制作していくスタイルは、絵が「職人」の手による仕事であったことを思わせます。
驚くべきことには、人間を描くルーベンスと動物を描く画家、植物を描く画家が手分けして一つの絵を仕上げているという説明でした。
確かに同じキャンパスの中に、違うタッチが混在しているような気がしました。それぞれの職人の個性がひとつの絵の中に融合されているわけです。
ルーベンスは、画家として抜きんでた才能を持っていたのみならず、チームワークをまとめあげる手腕とリーダーシップを備えていたのでしょう。組織人としてのプロデュース能力を持っていたとも言えます。

楽器の世界でも、「親方」と呼ばれる技術者が数人のお弟子さんと一緒に楽器を制作したり、修復したりすることが今でも行われています。
親方の右腕になるような若いお弟子さんも、親方から独立してまた新たな工房を作り、そのような繰り返しの中から歴史や伝統が伝えられていくのかもしれません。
ドイツで勉強をするために渡った技術者の方が、雑用係として重宝がられてしまい、結局何も勉強できなかった・・・なんていう話も聞きます。
ルーベンスのもとで腕を磨き、自らの世界を確立して後世に名を遺した画家がいる一方で、単なるコマというか戦力として使われてしまった、たくさんの職人もいたことでしょう。いったい何が分かれ道だったのだろう・・・なんてことを考えてしまいました。
「ルーベンス展」は、4月21日まで開催される予定です。

ルーベンスを見たあと六本木へ。
ワインショップ「ソムリエ」に寄り、飛び交うフランス語が心地よく響く中で軽く息抜きをして帰宅。
夜中1時までかかって確定申告を仕上げました。

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