世界三大ピアノの響き

宮地楽器小金井ホールにおきまして、「久元祐子コンサート~世界三大ピアノの響き~」と題し、演奏させていただきました。
宮地楽器小金井店ショールーム・オープン30周年記念特別企画ということで、スタインウェイ、ベーゼンドルファー、ベヒシュタインと3台のピアノを使った贅沢コンサート。
売り出しと同時に満員御礼となってしまったそうで、お申込みいただきながら、お断りせざるおえなかったお客様が多くいらしたそうです。申し訳ございませんでした。

ベヒシュタインで、ドビュッシーやリスト。
スタインウェイで、ベートーヴェン。
ベーゼンドルファーで、モーツァルト、シューベルトなど。

ベヒシュタインとスタインウェイは、1853年創業。ベーゼンドルファーは、1828年創業。
いずれも、創業以来、現代まで、数多のピアニストたちによって弾かれ、多くの歴史を刻んできた、世界を代表するピアノメーカーです。
続けて弾くことによって、それぞれの音色や個性が浮かび上がるように思えました。

ベヒシュタインの気品とビロードのような音色。
スタインウェイのパワーと性能。
そしてベーゼンドルファーの温かみと歌心。
3台ともまったく違う音色ですが、それぞれの良さがあり、好みを決めるのは難しいかもしれません。

奏者の心を鍵盤に伝えるタッチ、それが弦にどう届くかは、外から見ているとヴァイオリンなどと違い、ブラックボックスのようで見えにくいのですが、指を通じて、弾いている本人には、ダイレクトに伝わり、各楽器の微妙な違いが、はっきりと返ってきます。

そして音色をどう響かせるか、のアプローチも、3台それぞれはっきりと異なります。
各音が独立して聴こえてくるベヒシュタインを、ドビュッシーやワーグナーが愛したのもうなずけますし、全体のバランス、鋼鉄を鳴らすパワーと切れ味の鋭さを持ったスタインウェイが、アメリカで圧倒的に支持されたのも当然のこと。
そしてウィーンの伝統を持つベーゼンドルファーは、柔らかな木を使い、人の声のような温かい響きを目指していることがわかります。
音がブチッと切れるのではなく、ダンバーがゆるやかにふわっと音を止めてくれるような優しさは、ウィーン古典派の演奏にマッチします。

アンコールでは、ハイドンとモーツァルトを続けて3台で演奏。
鍵盤の深さもタッチも違うピアノでしたが、お母さんが子供の顔を見間違うことがないのと同様、今でも3台それぞれの響きが耳に残っています。
技術スタッフのみなさんとの打合せなど、昨日から準備を進めた音楽会。
私にとっても楽しいコンサートとなりました。

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