「秋の歌」

散歩
秋
好きな季節がやってきました。日本の秋はやっぱり素晴らしい!

けれど、秋の散歩のとき、なぜかいつも心に浮かぶメロディーは、ロシアを代表する作曲家、チャイコフスキーの「秋の歌」なのです。ニ短調の寂しげな旋律、ため息のようなモチーフ、せつなくなるハーモニー。

ベートーヴェンは、ヘ長調で「田園」シンフォニーを作曲し、自然を賛美しています。それを意識してかどうか、自然のうつろいのはかなさ、淋しさをチャイコフスキーは、平行短調のニ短調で表現しています。

10年ほど前、チャイコフスキーのピアノ曲集「四季」を詩の朗読とともに演奏したことがあります。
「四季」は、もともとチャイコフスキーがレニングラードの月刊誌のために作曲した曲。毎月の付録として、チャイコフスキーの曲と同時代の詩人の詩がセットになっていました。12か月で12曲。小品なれど、四季折々のロシア風物詩として珠玉の曲集となり、チャイコフスキーのピアノ曲の中で最も親しまれています。

10月「秋の歌」は、A・トルストイの詩とセットになっていました。トルストイと言っても「アンナ・カレーニナ」や「復活」のトルストイとは別人です。
「われらの憐れな庭はやつれていき、黄ばんだ木の葉が風に飛び散っていく・・・」とメランコリックな詩情を謳いあげていますが、チャイコフスキーの曲のほうが、もっと哀しく、もっと孤独です。

12曲セットの「四季」という曲集。古くはモーツァルトの父、レオポルトも作曲しています。12曲すべてがヘ長調。9月は「収穫の月」、10月は「ワインの月」という具合で、取り替えてもあまり問題がないような、似た感じの12曲です。

メンデルスゾーンの姉ファニー・メンデルスゾーンも組曲「四季・12か月」を作曲しています。こちらは、さまざまな形式で描かれた緻密な曲集です。

何百年の間繰り返されてきた四季の移り変わり。作曲家が感じたそれぞれの「四季」のありようが音符の中に生きています。

コメント