3月10日、神戸新聞松方ホールに於きまして開催されました中山・KLCコンサート2017に出演させていただきました。このコンサートのコンセプトは、「みえない人、みえにくい人、みえる人・・・いっしょに音楽を!」です。
会場には、目の不自由な多くの方がいらしており、盲導犬の姿も見えました。
公益財団法人 中山視覚障害者福祉財団の湯川洵常務理事の心温まるご挨拶に続き、荒木温子さんと宮下和子さんのヴァイオリンデュオ。お二人がのびのびとアンサンブルを楽しんでおられる姿から音楽の楽しさが伝わります。
そして北村多恵さんのソプラノ、寺嶋千紘さんのピアノで林光の「ほうすけのひよこ」など。
透明感のある澄んだ声は、古楽にも合う・・・と思いお話をお聞きしましたら、リュートのつのだたかしさんとよく古楽のコンサートをされておられるとか。
コラボコーナーでは、私も「春への憧れ」を伴奏させていただきました。たいていの歌い手さんの場合、最初のファの音をピアノで出して、音の高さを示すか、前奏を弾くか、、、ということがほとんどです。
ところが、視覚障害をお持ちの北村さんは、「私、音は身体に入っているので、ファの音はいりません。」と仰います。耳や音感が人一倍優れておられるのでしょう。はっきりとした自己主張と強い意志のある歌を披露してくださいました。
プログラム後半は、ベートーヴェン、モーツァルトなどの古典からリストまで、1時間ほど私の演奏。間でコンサート実行委員長の松田啓子さんとブラームスの「ハンガリア舞曲」や「蚤のワルツ」を連弾。コンサート実現のために、尽力されておられる松田さんはじめ、財団の皆さまに感謝をこめて演奏させていただきました。
音への集中力と気の交流を満員の会場から強く感じた今回のコンサート。ふと前の席の盲導犬と目が合いました。1時間のコンサートを静かにじっと聴いてくれる盲導犬たちに感心していたのですが、「では最後に小犬のワルツを・・・」と話した瞬間、賢い目のワンちゃんが首をもたげ、こちらを見てくれたのです。「あたしの曲?」という感じで。大きなワンちゃんたちのために「小犬のワルツ」を捧げました。
終演後、お客様たちとしばし歓談。国立音大同調会の皆様が応援に来てくださっていたり、久しぶりにお会いする知人の方などと嬉しい再会。
初めてお会いする目の不自由な女性から「今日は、あなたのピアノにとても癒されました。そしてあなたの話す声は、まるで焼きたてのパンのよう」と言われました。パンの美味しい神戸で「パンのよう」と言っていただいたのは光栄なこと。私の体形が丸いパンのようであることも見破られていたかも・・・です。
今回の演奏会では、点字のプログラムも配布されていました。不勉強で恥ずかしいのですが、私は全く点字が読めません。目をつぶって、集中してそっと触ってみてもどういう仕組みなのか、見当もつかないのです。目の不自由な多くの皆さんの聴覚、触覚が、並外れて優れておられることをあらためて感じた午後でした。
明日のコンサートがある諏訪への移動は、名古屋から1時間に1本出ている「しなのワイドビュー」に乘らなければならないため、急ぎ着替えて新幹線の駅に向かいました。タクシーのベテラン運転手さんが上手に走ってくださったのですが、「微妙だなぁ。あと信号が3つある。一つは結構長いんだ。」
EXカードは、何度でも変更ができる便利な仕組み。「うーん。無理ね。1時間遅いのに変えようかしら」と言った矢先、信号が青に。
「お客さん、少し多めにお金を置いておいて。」
「はい!」
あらかじめ、お釣り銭を握った運転手さんが、新神戸駅に到着したのが新幹線出発の2分前。
ところが、間際にメーターがさらに上がってしまい40円の不足。
慌ててお財布から出そうとする私に
「何やってるんだ。そんなの出してる場合じゃない!あとは、お客さんの脚力が勝負だ!!!急げ!」
「ごめんなさい!ありがとう!」
猛ダッシュで新幹線に飛び乗り、山並みの美しい夕暮れの「しなのビュー」で、ビューっと諏訪に着き、温泉付きビジネスホテルに倒れ込みバタンキュー。濃い一日が終わりました。
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