今年のお正月は、ウィーン・サロン・オーケストラとの共演で始まりました。
オーケストラのメンバーは、1月4日に来日し、すぐにオペラシティの大リハーサルルームで合わせ練習。その後すぐに群馬公演、浜松公演に向け出発。昨日、東京に戻って休む間もなく、今日の公演日を迎えました。彼らのスーパー・パワーには脱帽です。
今回、共演させていただいたモーツァルトのピアノ協奏曲 第9番「ジュナミ」はスリリングでわくわくする名曲です。「ジュナミ」の第3楽章、中間に挿入されているメヌエットは、ほかのコンチェルトには見られない斬新なアイディア。疾走するテンポ感の中で、優雅さが際立つ箇所ですが、微妙な揺れや細やかな装飾音など、合わせの難所をGPでは繰り返し練習しました。
通常は、指揮者のタクトでピタッとタイミングを合わせていくのですが、このオーケストラには「指揮者」として音を出さずに合図を送る人は存在しません。ヨハン・シュトラウス時代の伝統に則り、コンサート・マスターのウドさんが皆を統率しながら、音楽が進みます。そして何と言っても、指揮者なしでのアンサンブルは、互いの音を「聴きあう」ことでしか成立しません。眉毛の小さな動き、首の微かな揺れや息遣いを敏感に肌で感じとり、全体を聴きながら自分の音を奏でるメンバー。
今回、5回目の共演となり「久しぶり!元気だったかい?」「調子はどうだい?」と自然なやり取りで始まるリハーサル。演奏しながらの微笑みやアイコンタクトが嬉しい共演でした。この「聴き合い、息を合わせ、一つの世界を作り上げていく」というアンサンブルの原点を、年の初めにあらためて感じる機会となりました。
様々な変化に富んだ表現に、ベーゼンドルファー280VCの艶のある響きと、東京オペラシティコンサートホールの素晴らしい音響が大いに助けてくれました。
後半は、彼らにとっては、生まれたときから身体に馴染んでいるお得意の「ウィンナー・ワルツ」やオペレッタの名場面。ソプラノのヘーゲさん(ピンクのドレスの美女)とは一年ぶりの再会で話が弾みましたが、これから出番というのに、舞台に出るギリギリまで息子さんの話題や旅の出来事などお喋りが続き、果ては私と一緒にふざけてワルツを踊ったり・・・。信じられない余裕綽綽ぶりです。
彼らにとり、ウィンナーワルツ”も”オペレッタ”も「日常の音楽」であることを実感した舞台袖でした。再会の日まで!「アケマシテオメデトウ」と日本語で声を合わせて記念撮影と相成りました。
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