ウィーンの風 真夏の夜の夢コンサート

神戸市立東灘文化センターうはらホールにおきまして、《ウィーンの風・真夏の夜の夢コンサート》第1夜「久元祐子と奏でるデュオの夕べ」(主催:ケイ・ムジークフロイデ)に出演させていただきました。共演のヴァイオリニスト、ペーター・ヴェヒターさんは、1941年生まれ。ウィーン国立歌劇場管弦楽団に入団後、翌年からウィーン・フィルハーモニー管弦楽団第2ヴァイオリン首席奏者を40年間勤められた大ベテランです。80歳とは思えぬ若々しくエネルギッシュなペーターさん。陽気な笑顔で握手してくださったあと、綿密な合わせにはいりました。

音楽の横糸、縦糸、そのすべてを敏感な耳でキャッチし、豊かなファンタジーの翼で時間軸の流れを作っていかれます。私達は演技者でなければならない!と仰り、素早く変幻自在に音楽の表情とテンポをコントロールし、音の綾を織りなしていきました。短時間の合わせだけでペーターさんの音楽に完璧に寄り添えるようになったわけではありません。けれどその豊かなイマジネーションとしなやかな感性から生まれる導きと示唆から実に多くのことを学ばせていただきました。

本番当日午前中、妥協のない合わせが続き、「近づいているけれど、まだもっとできるはずだ!」と喝が飛びます。「聴こえるか聴こえないかわからないほどの微かなピアニッシモを!」と要求されたあとで、スタインウェイのフルコンの蓋を全開にし「やっぱり蓋はあけたほうが音が美しい!」と言われるペーターさん。弱音を出すためのハードルがさらに上げられ、私のダイナミックレンジの幅を広げる挑戦となりました。午後はいったん自宅に戻り練習と休憩。

夕方のGP後、「さあ、本番は思いっきり楽しもう。」とステージに上がるペーターさん。歌心あふれるシューベルトのヴァイオリン・ソナチネ第2番、神秘的でロマンティックなベートーヴェンの第10番ヴァイオリン・ソナタ、美しい祈りに満ちたフランクのヴァイオリン・ソナタ。アンコールには、バッハの「G線上のアリア」とブラームスの「ハンガリアン舞曲」。

夢の世界にいるようなウィーン・フィルの響き、音楽の神秘性、非現実の世界に連れていかれるような独特の世界が生まれる秘密を垣間見せていただいたような瞬間でした。

演奏後、ステージでBRAVA!と固い握手をしてくださったあとは、打ち上げ会場「蘇州園」へ。
ビールで乾杯後、優しい奥様マリアンヌさん、ヴェルナー・ケーラー大阪・神戸ドイツ総領事ご夫妻、ケイ・ムジークフロイデの永丘恵子さんらと和やかで楽しい音楽談義が続きました。

お世話になりました皆様、ご来場くださいました皆様に御礼申し上げます。

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