ベーゼンドルファー工房にて

コンサート翌朝は、早起きをしてウィーンナーノイシュタットにあるベーゼンドルファー工房へ。

ピアノの制作過程をまじかに見せていただく度、理想の響きとフォルムを求めるプロフェッショナルたちの「熟練の技」に圧倒されます。

いくつかの楽器を試弾し、制作途上の楽器の状態を確認し、技術者の方たちとの濃い時間を過ごしました。

生まれたばかりの楽器から信じられないほど美しい響きが立ち上る瞬間は夢を見ているかのよう。
遠くに飛ぶ音は、決して大きく強い音だけではなく、倍音とともに静かに空気を伝わっていくような神秘的な音がある・・・。名器から教えてもらうことの尊さに感謝です。
工場の顔馴染みの職人さんが増え、「お。よく来たね」と仕事の合間に挨拶を送ってくれます。「俺たちの作った楽器、いい音で鳴らしてくれよ」と言われているような気がしています。

工場にもショールームにも「ベーゼンドルファー・アーティスト」の写真がずらりと並んでいます。尊敬するアーティストらの懐かしいお顔から、名演の記憶が心に浮かびます。
拙い私がベーゼンドルファー・アーティストの称号をいただいて8年。その間多くの楽器を弾かせていただいてきました。壁にかかるアーティスト写真。。。私の顔を探すとたまたまオスカー・ピーターソンとバックハウスの近く。
畏れ多くて身が縮む思いがしました。

300年あまりの歴史の中で発展してきたピアノという楽器。毎日触れ、日々奏でる中で、自分の声のように感じる分身でもあります。けれど知れば知るほどわからないこともたくさん出てきます。
これからも演奏を支えてくださるみなさんに感謝しながら、研鑽を積んでいきたいと思っています。

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