あたたかな夜

昨夜は、永いお付き合いをさせていただいているK様のお宅でプライヴェート・コンサート。

ベーゼンドルファーのヴィエナ・モデルが、はるばるウィーンから素敵な邸宅にお嫁に来て1年ほど。
ウィーンの工房で技術者の方から楽器細部の説明を受けたり、最終チェックに立ち合ったりした日のことを懐かしく思い出しました。工房の方々が口を揃えて「音も見た目も美しいだろう?」と得意げに、愛しげに、満足顔で言っておられた日を懐かしく思い出しました。

親しい方々が集う親密なサロンに、ベーゼンドルファーの温かで自然なウィーンナートーンが満ちていきました。
今回は、音楽通のお客様が揃い、前もってのリクエストもマニュアックな曲が混じります。ハイドン愛好家の方からのリクエストが、ハイドンの《アンダンテと変奏曲 ヘ短調》。曲はヘ短調とヘ長調を光と影のように扱い、悲しみと希望が交錯する作りになっています。修辞学的にも「嘆き」「溜息」「叫び」の音型などが登場し、心に訴えかけるように曲が進んでいきます。そして心のざわめきを細かい波のような音符に託し怒涛のようにたたみかけるクライマックス。パパ・ハイドンの技が光ります。

ベーゼンドルファーの横には、本物の樅の木のクリスマスツリー。たくさんの可愛いお孫さんのお写真なども飾られていました。

午後のリハーサルの時には鳥の鳴き声がしていたお庭。夜はトナカイさんのライティングに代わっていました。
来週は、お孫さん達も集まって賑やかなクリスマスとなることでしょう。

愛情に満ちた空間に置かれたベーゼンドルファーを弾かせていただく時間は私にとって至福のひととき。
永いご縁、そしてベーゼンドルファーの輪と和の時間に感謝申し上げます。

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