国立音楽大学 国際マスタークラスシリーズ。
国際的にご活躍の音楽家をお招きして行う公開講座。今日は、作曲家の池辺晋一郎先生が講師。
オーケストラスタジオにおいて、指揮者の板倉康明先生、作曲家の川島素晴先生との鼎談形式で行われました。
池辺先生の若き頃の作品、「ブラック・ブランク・ブレイズ 4×2+1クラリネット群のために」「フルート・フラックス(笛の流束)フルート合奏のために」の実演(指揮:西山夏生さん)を交え、初演の頃の想い出や「演奏者が苦労することはわかっていて意地悪で書いた」などユーモアを交えたエピソードが続きました。
若い頃、クラリネットを吹いておられたという池辺先生。作品の中にモーツァルトのクラリネット五重奏曲の一節が出てきても不思議に溶け合う不思議な世界でした。
「あらゆる方法論を学んだ末、方法論からのアプローチではだめなことがわかり、ゼロから出発した」と若い頃のご自分の学びについて回想されました。音楽以外のいろいろな事に興味をもつこと、人的交流を大切にすること、など人生の達人、一流の作曲家からのダイレクトなアドバイスに聞き入る学生達。
交響曲11曲、オペラ、室内楽曲、合唱曲の他、映画、演劇、TV音楽まで、あらゆるジャンルの音楽を作曲してこられた先生ですが、
「映画は虚像の世界、演劇は生身の人間の世界のための音楽、TVの音楽はアテンションさせる音楽。それぞれ音楽の役割が違う!」とのお言葉には説得力がありました。
「作曲家になりたい」くせに曲をほとんど知らない学生、「音楽家になりたい」と言いながら音楽をほとんど聞いていない学生がいる!と厳しい一言。
「80歳を過ぎて悠々自適の生活になるかと思ったら、全然暇にならない。今日もこれから帰ったら、委嘱されているピアノ協奏曲を書かなくてはならない。」とのこと。
私が最初に池辺先生にお会いしたのはレニングラードのホテルの食堂でした。その後、10年以上たって新幹線でばったりお会いするとレニングラードの演奏会で私が弾いた曲まで覚えておられたのには仰天しました。コンピュータよりパーフェクトな記憶力、幅広いマルチな才能全開の人生、八面六臂のエネルギッシュなご活躍が現在進行中!の先生でした。
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