ウィーン国立音楽大学ピアノ科教授のヤン・イラチェック・フォン・アルニム先生が、2025年度長期招聘教授として来日。国立音大でご指導くださいました。
レッスンでは、フレーズ構造、曲の中でのクライマックスはどこか、音と音の関係性など、論理的に説明され、
現代ピアノでの演奏の際、当時の楽器のことを考えてトーンダウンしなければならないことや、具体的な練習方法など
エネルギッシュに、細やかに、温かいレッスンを展開されました。
25日は、朝10時半から16:10までのレッスンを終え、18:10からオーケストラスタジオで「ベートーヴェンのピアノ・ソナタについて」のレクチャー。
疲れを知らないエネルギーには感服です。気さくで、優しいお人柄は、学生達にも大人気。追加の補助いすがでるほどでした。
古典派のソナタの枠を超えた当時の「現代音楽!」ベートーヴェン。「ベートーヴェン愛」が止まらない先生は、情熱的にベートーヴェンの人生と作品について、演奏を交えてお話しくださいました。
演奏に関しても、構造を重視するドイツの伝統、優美なダンスの文化が根付くオーストリアの伝統など、国による文化の違いについて触れられました。
ドイツで学び、ウィーンで教える先生ならではの密度の濃いレクチャー(名通訳:奈良希愛先生)でした。
最後にドイツの伝統を継承する巨匠クラウディオ・アラウの言葉を引用され、「たくさんの根っこ(知識、バックボーン、基礎)をもつ音楽家になる」ことの大切さを強調されたイラチェック先生。
今回、私の門下の大学院生と学部3年生のソリストコースの学生2名が、モーツァルト、メンデルスゾーン、シューマンでレッスンしていただき、打ち上げ懇親会には私も参加させていただきました。
歴史的楽器の話題に始まり、ベートーヴェンとモーツァルトのソナタでリピートした時の奏法の違いについて、ご自分が受けてきた教育のこと、ピアノ奏法に大切な弛緩の身に着け方など、いろいろお伺いすることができました。
「来年また会おう!」と仰ってくださった先生。巨大な手を振り、軽やかな足取りで階段を降り、一人でモノレールに乗りホテルへ。
少年時代から理想的な教育を受け、20代で教授に就任。エリート街道まっしぐらにもかかわらず「実るほどに頭を垂れる稲穂かな」のたとえ通り、「偉そう」なところが全くない素敵な先生でした。



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