みなとみらいコンサート「第21回 ピアノの歴史」

11台の歴史的楽器が一同に集まる贅沢コンサートです。
私は今回、ナネッテ・シュトライヒャー(1818年製、ウィーン)でメンデルスゾーン、シューマン、
イグナーツ・ベーゼンドルファー(1858年製 ウィーン)でシューマン、リスト、
そして後半は、プレイエル(1848年製 パリ)でショパンを、
それぞれ弾かせていただきました。

101010-3

透明な音色が美しいシュトライヒャー、渡邊順生先生の愛器です。
鍵盤も浅く、デリケート。
指のこまやかな動きによってディナーミクや音色の変化ができ、ペダルによってさらにパレットの種類が広がります。
この時代の楽器は未知の部分が多く、わずかなリハーサルの間に試行錯誤しながら、ペダルのコントロール、タッチの具合を選びました。

ベーゼンドルファーは、3年前にはすこぶる上機嫌な楽器だったのですが、この夏の暑さのせいか、あるいは、最近の雨のせいか、今回、鳴らない音が多く、調整にもかなり時間がかかり、ハラハラしました。
けれど中音域のウィンナートーンといわれる独特の味わいは、特にピアニッシモで威力を発揮し、もともと持っている楽器の魅力を再認識しました。
願わくは、ベーゼンドルファーらしい豊かなバスの音が、全開してくれるよう楽器本来の音が鳴るように祈りながらリハーサルを終えました。

鍵盤を押せば当然音が鳴る、という現代ピアノでは常識のことが、歴史的楽器では、運を天に任せて・・・というような部分も多く、あらためてオリジナル性の追求と調整の道の厳しさを感じました。

プレイエルは、同音反復の難易度が個々の楽器によって微妙に違います。
ほかのテクニックや音色の変化はスムーズで、ピアニッシモの色合いも多彩なのですが、同音連打が思うようにいかない箇所がいくつかあり、あらためて楽器個々の個性を瞬時につかむ必要性を痛感。

いずれにしましても、3台の名器を弾かせていただく機会に恵まれ、本番では、素晴らしい朝岡さんの語りのもと、西原先生のお話をいろいろお聞きすることもでき、私にとっても贅沢なコンサートとなりました。

101010-1

お世話になりました主催の皆様、長い時間おつきあいくださいました
お客様に心から御礼申し上げます。

コメント

  1. yuko より:

    長時間おつきあいくださり、ありがとうございました。
    あれだけの数の歴史的楽器が一同にそろうことはめったになく、
    当日は、慌ただしい一日でしたが、ピアノの歴史を音で味わうことができる貴重な一日となりました。
    またお聞きいただけましたらうれしいです。

  2. ハナミズキ より:

    古楽器の透明で繊細な音色を素晴らしいホールで聴けて、なんとも言えない感動を味あわせていただき至福の時を過ごさせていただきました。
    ピアノの変遷について、やさしく解説をしてくださり、ピアノの構造や音色の不思議さを知ることもできて有意義な一日でした。
    祐子さんの演奏に心からの拍手を送り、ますますのご活躍をお祈りしています。
    今日の素晴らしい演奏会をショパンさんは
    どのような思い出聴いてくださったかしらと
    ?空想しながら帰路につきました。
    演奏会に携わられた方々にも感謝です。
    本当に素敵なコンサートでした。