アール・レスピラン第26回定期演奏会

アール・レスピラン第26回定期演奏会が紀尾井ホールで行われ、聴かせていただきました。
1985年に演奏家、作曲家によって結成された室内オーケストラ。
芸大の先輩や後輩など懐かしい顔ぶれが舞台に並び、ともに学んだ仲間が現代曲に真摯に向きあっている姿に感銘を覚えました。
生まれたばかりの曲というのは、どのような曲なのか、初めて聴く者にとって未知の世界です。
クラシックで耳になじんだ曲をどのように解釈するのか、という期待とはまた一味違った、独特の緊張感が客席を包みます。

今年の紀尾井ホールからの委嘱作品のテーマは、「誕生」。
大場陽子さんの「誕生」は、生物誕生に関わる「月」の満ち欠け、40億年前の海底で生まれた最初の生命、6億年前のエディアカラの穏やかな楽園、ご自身の出産の体験とも結びつく赤子のラブソングの4曲構成。
初演に立ち会うことができた今日の聴衆は、誕生について、また遠く遥か原初生命体としての人間の命について深く感じる時間となりました。

プレトークで大場さんとお話しされていた作曲家の安良岡章夫さんも近々お父様になられるとか。
まさに「誕生」のテーマの演奏会にふさわしい出演者でした。
その安良岡さんの作品は、リフレクション・ネビュラ・~3本のクラリネット、コントラバス、打楽器のための~という作品。
かなり短い期間で仕上げられたそうですが、3人のクラリネット奏者が、音色を(b管、バス・クラリネット、Es管)を縦横無尽に飛翔させ、マリンバやドラム、トムトムなどが色を添え、コントラバス名手、吉田衆さんによって音世界に奥行が与えられていきます。
リフレクション・ネビュラは、日本語では反射星雲。
星間分子雲が近くの恒星の光を反射することでわれわれの目に見える天体を指す言葉だそうです。
たくさんの音の粒子たちが空間に飛び散った曲でしたが、クラリネットの持つ音色の柔らかさも印象的でした。

ほかに東欧の作曲家、ヤロフ、ヤナーチェク、エネスコの作品。
演奏機会の少ない曲を一流の奏者たちの演奏で聴くことができる、価値ある音楽会。
客席に空席が多いのは残念で、今後このシリーズをさらに盛り立てていかれる方向に行くことを願いつつ、ホールをあとにしました。

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