ラフマニノフ2番・サントリーホール

サントリーホールで開催された第20回のセレモアつくばチャリティーコンサートに出演させていただきました。
今日のプログラムは、「眠りの森の美女」組曲から「イントロダクション」「パノラマ」「ワルツ」、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、後半は、ドヴォルザークの「新世界」。
おかげさまで3月に満員御礼となり、4月に入ってお申込みいただいたみなさまには申し訳ありませんでした。この場をお借りし、お詫び申し上げます。

サントリーホールは、音響の素晴らしいホールとして知られますが、客席から見るステージより、ステージから見る客席のほうが近く感じられるのは不思議です。2階席の一番後ろの席の方までよく見える感じがするのです。当然音も後ろまで通る・・・という気持ちで弾くことができるのは、奏者にとってありがたいホールです。
ホールによっては狭いのに「届いているかしら?」と不安になるようなこともあり、天井の高さ、空間の助けは、音を発信する立場からありがたく感じます。

指揮は、今回初共演させていただきました湯浅卓雄先生。

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オーケストラは、日フィルのみなさん、ゲストコンサートマスター豊田弓乃さんです。
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キレのよい湯浅先生の指揮でチャイコフスキーのわくわくするような音楽で幕を開け、舞台にピアノが登場。
指揮台を斜めに置き、ピアノの下に少しだけ指揮台が入り込む、、、という置き方は、湯浅先生のご指示です。
オーケストラは、チェロが正面、という位置。杉並での合わせのときにプルトが少な目に感じたのですが、サントリーは、音響が良いので、音量的に充分な響きです。

コンチェルト冒頭は、ドからソまで届いた巨大な手の持ち主ラフマニノフならではの和音です。この和音をアルペジオでばらして弾くとハープのようになるので避けることとし、バスのファを先に弾いてほかの音は同時に和音として鳴らして、鐘の音の響きを狙いました。
ラフマニノフというと映画のシーンを思い出す・・・という方もおられ、「映画音楽作曲家」としてのイメージで見られることも多い作曲家ですが、弾くたびにこの曲のオーケストレーションの緻密さに驚きます。
各楽器の音色の特性を見事に生かし、ピッツィカートの弦楽器と柔らかな木管を同時に鳴らすことにより、輪郭がはっきりしているのに、しなやかな流れができて、独特のささやくような雰囲気が生まれたり、ディナーミクを微妙に書き分け、目立たせたい音に光が当たるような設定にしたり、テンポの持っていき方も頂点に向け綿密なコントロールで設計されています。
どこもかしこもルバートすると曲として収拾がつかなくなり、辟易するような音楽になってしまいますが、ラフマニノフ節と言われる独自の旋律も、綿密にテヌートがつけられていて、おさまるところにおさまり、燃える場所で燃えるように書かれています。

第1楽章の再現部で Maestoso でテーマが再現する箇所のテンポ設定など、いくつか解釈が分かれる箇所もあり、それがまた演奏によって個性の違いが出るところでもあります。
ただ、ピアノ用の譜面とオーケストラのフルスコアで違うことを書いていたりする箇所もあります。たとえば第3楽章、オーケストラは2分の2なのに、ピアノ譜は4分の4で、これは完全にピアノ譜の間違いと思われます。
こういう楽譜として不完全な部分は、コンポーザーピアニストの証?!でもあり、モーツァルトに至っては、左手空白!なんてこともあるくらいですから、目くじらを立てる問題ではないのかもしれませんが、ラフマニノフさん、生きているとき、初演が終わって再演をするあたりで、「決定版」を自らつくっておいてほしかった・・・という気もします。

とはいえ、ロシアの大地から湧き上がる情念とロマンの世界は、そんな楽譜のこまかな問題などもろとも吹き飛ばしてくれます。
満員のお客様と一緒にその大きな世界を共有させていただきました。
アンコールには、エルガーの「愛のあいさつ」が演奏されました。
お聴きいただきました皆様、お世話になりましたセレモアホールディングス株式会社のスタッフの皆様、このコンサートのためにご尽力くださいましたすべての皆様に、心から感謝申し上げます。

コメント

  1. yuko より:

    コメントありがとうございます!
    明日から旅に出てきます。中国の瀋陽で演奏会です。
    瀋陽、初めてなので楽しみですが、
    食べ過ぎないよう注意しなくちゃ!ですね。

  2. tabi-taro より:

    そんな久元さんの名演奏を、サントリーホールで目の当たりに出来た私は何と幸せ者でしょう!
    健康に留意され、益々円熟のピアノ演奏をまた私たちに聴かせてくださいね。次のコンサートのお知らせを楽しみにしています。