モーツァルティアン・フェライン例会

おなじみのフェラインの例会。
今年もまたお招きいただき、セレモア・コンサートホール武蔵野 で、レクチャーコンサートをさせていただきました。
モーツァルト命!のモーツァルティアン、モーツァルティアーナが勢ぞろい。
「もう久元祐子は飽きた」という日がずっと前に来ていてもおかしくないのですが、私の若いころ(細いころ?!)からずっと演奏を聴いてくださってきている皆様を前に、毎年この6月に演奏させていただいています。

今回は、プレイエル、エラール、ベーゼンドルファー、スタインウェイの、4台のピアノでモーツァルトのピアノ・ソナタハ長調KV330とイ長調KV331を聴き比べていただきました。
プレイエルを愛したショパン、エラールを好んだリスト。楽器の趣味も作風も人生も遠く隔たっていたふたりでしたが、モーツァルトの音楽を愛していたことは同じでした。
ショパンとリストがどのような音でモーツァルトを弾いていたのか・・・ということで、今回の無謀な?!コンサートを企画しました。

軽やかさという面では、エラール。
ころころと玉のようにころがるパッセージなどを軽快に演奏することが可能です。トリルも得意。音はちょっと派手めで、リストはモーツァルトをこんな風にサロンで披露していたかもしれません。

プレイエルは、そういう面では、モーツァルトに向かない楽器と言えましょう。
けれど第2楽章で歌心を表現する場面では、不思議に魅力を発揮するのです。ふだんプレイエルでモーツァルトは弾きませんから、今回はこれは大きな発見でした。
今回プレイエルのために選んだのはKV330の第2楽章。この曲は、中間部が短調となり、同音反復が心臓の鼓動のように続く曲です。
シングルエスケープメントのプレイエルにとって同音反復はもっとも苦手技。あえてこれに挑戦したところ、レオポルトの言う「光と影」の影の部分が浮かびあがってきたのです。

前半と後半とは15分の休憩でしたが、時代にすると160年の開きがあります。
ハンマーの巨大化に伴い、タッチも重くなり、さしずめ馬車からF1レースのスポーツカーへ、蝋燭から電気の時代へとひとっ飛びです。馬車から降りてスポーツカーに飛び乗り、振り落とされないように・・・といった感じでしょうか。

最後は、プレイエルを使って「別れのワルツ」でお別れし、タイムスリップ・コンサートは終わりました。
和やかな懇親会では、今後のコンサートのことやモーツァルトのこと、様々なピアノの話などで盛り上がり、、あっという間の2時間でした。

お世話になりましたフェラインの皆様、例会でお聴きくださいました皆様、ありがとうございました。

コメント

  1. YUKO より:

    toruさま
    コメントありがとうございます。鋳鉄が増えていく歴史がピアノの歴史なのですね。toru様のような方にピアノについてのくわしい解説をお願いしたかったです。昨日は、ヴァルターモデルのピアノフォルテで演奏会でした。バロックヴァイオリン、バロックチェロ、フラウト・トラヴェルソとの共演でしたので、ピッチも低くし、6分の1(ヴァロッティ)の調律でした。楽器によって、調律によって、同じ曲がまったく別物に聞こえることを痛感しました。

  2. toru より:

    モーツァルティアン・フェラインの
    toruです。
    久元先生、素晴らしいコンサートありがとうございました。4台の名器+クラヴィコードの演奏なんてほとんどあり得ません。
    先生ご自身も「無謀な・・」とおっしゃってましたが、我々には至福の時間でした。
    私はプレイエルの音色が気に入りました。エラールの軽やかさも捨て難いですが。
    またベーゼンドルファーのK331第3楽章の響きの多様さにも驚きました。休憩時間に楽器を見学しましたが、興味深々!
    フレームは4台とも鋳鉄製でしたが表面の
    仕上がり具合や形状の複雑さ、交差弦や低音弦の巻き線採用など製造技術の進歩を実感
    しました。先生がおっしゃってたように
    現代のピアノが18・19世紀の楽器と
    別物になってしまったと捉えるのではなく
    進歩・進化したのだと捉えたいと
    技術屋として思いました。
    先生の今後の更なるご活躍をご祈念して
    おります。
    9・11何とか行けないものかと思案して
    おります。ちょっと遠方なもので・・汗